ケーススタディ(1)
ポジティブになり、必要とあれば、気をそらさせるものから遠ざかる

 ゼバ・ラシドは、セレブリティ・イベント管理のスペシャリストだ。これまでのキャリアを通じて、さまざまなオフィス環境で働いてきた。

 彼女は、密室や高いパーティションがある、いわゆる企業らしい環境よりも、オープン型のオフィスを好む。「(私の仕事は)他の人とつながることがすべてです。私自身の経験から、オープンな環境はアイデアのフローを促進すると同時に、人脈を円滑にすると実感しています」とゼバは言う。「また、オフィスで対話を重ねると、クリエイティビティがあふれ出すことも自覚しています」

 オープンな環境のプラス面を重視する一方で、「レーザー光線並みの集中力」を仕事に注ぐ必要があるときには、オープン型オフィスの環境は最適でないと、ゼバははっきりと認める。

 ニューヨーク市を拠点とするPR・デジタルマーケティング代理店CRCのバイス・プレジデント兼インフルエンサー・マーケティング担当ディレクターの職責にあって、ゼバは騒音や気をそらさせるものへの対処法を会得した。彼女いわく、「重要な契約や提案に取り組んでいるときは、よくヘッドフォンを付けます」。ヘッドフォンが合図になり、同僚たちは彼女が「締め切りの迫った案件に取り組んでいる」最中で、静寂を必要としていることを察する。

 オープン型のオフィスで重要なことは、「他人の会話に割り込まないこと、それがカギです。なぜなら、オープンスペースの要は、尊重し合うことにあるからです」とゼバは言う。

 ゼバは最近、大事な締め切りのある仕事をしている間、同僚たちとの会話から物理的な距離を置くため、会議室を予約した。「オープンスペースの最大の課題は、社交のプロトコルを設定することだと思います」と彼女は言う。「率直に伝えて上手に席をはずせば、友好関係に大いに役立つと、いつも実感しています」

 彼女はチームメンバーたちに、シンプルにこう伝えた。「目下、セレブリティ契約の仕上げに取り組んでいるので、何か緊用で私が必要であれば、会議室にいます」。ほとんどの人は働くためにオフィスにいるのだから、必要なときには抜け出して、おしゃべりを絶つことは難しくない。

 ゼバいわく、同僚たちと時間をかけて緊密な職場関係を育んできたので、「お互いに協力する方法や、おしゃべり禁止ゾーンが必要な場合を、みなが心得ています」。「オープン型のオフィス環境で働いているので、私は誰にとっても近づきやすく、身近な存在になれます」と彼女は言う。

ケーススタディ(2)
基本原則を定め、脳を鎮める方法を見つける

 ケートリン・スチュワートは、PRエージェンシー(企業広報を代行する会社)TASCのシニア・アカウント・エグゼクティブだ。同僚8人とオープン型のオフィスで働いている。彼女の上司でもある共同創設者には、セミプライベート・オフィスがあり、また比較的小規模のミーティング用に、半分だけ囲いのある会議室もある。

 オープン型のオフィスは多くの場合、チームの仲間意識を育むのに役立つと、ケートリンは考えている。「コラボレーションが増える効果があります」と彼女は言う。「みなでアイデアを出し合うことができるので、平等な環境が生まれます」

 だが、騒音が問題になることもある。耳障りな音は、気を散らせる原因になるほか、「多くの人を消耗させる」おそれさえあると、彼女は言う。

 そのため、オープン型のオフィス環境で最適な働き方ができるよう、チームで基本原則を設定した。たとえば、「部屋中に響き渡るような大声は禁止です。同僚と世間話に興じている場合は、もし他の誰かが電話に出ていれば、(声を潜めるように)気を配らなければなりません。話し合いが長引きそうな場合は、会議室に移動する必要があります」と彼女は言う。

 彼女によれば、この基本原則は「会話の基準点」だ。「その構成は、チームの総合的な強化と、ベストプラクティスの体系化を中心に据えています」

 瞑想が役立つことも、ケートリンは実感している。「勤務時間中、各自のタイミングで20分間、座ったまま目を閉じて黙想するように、上司がみなに勧めています」と彼女は言う。「脳を鍛えて、背景雑音を消すためのエクササイズです。心を静めるのに、とても役に立つと実感しています」

 いまのところ、ケートリンは雑音や気をそらさせるものと折り合いをつけている。だが、デスクの移動が仕事の向上に役立つと思えば、「絶対にデスクを移動するよう要請するつもりです」と彼女は言う。「この仕事で生計を立てているのです。生産性を高め、成功するために必要なツールは提供されるべきでしょう」


HBR.ORG原文:Staying Focused in a Noisy Open Office, October 11, 2018.

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レベッカ・ナイト(Rebecca Knight)
ボストンを拠点とするジャーナリストで、ウェズリアン大学講師。『ニューヨーク・タイムズ』紙や『USAトゥデイ』紙、『フィナンシャル・タイムズ』紙にも記事を寄稿している。