これまで自分に語っていたストーリーを確かめる

 人はみな自分の行動について、頭の中で自分なりのストーリーをつくり上げている。ときに周囲の人が言う通りのストーリーを描くこともある。就職先や組織内の地位といった、外部的な報酬が関わっている場合は、特にそうだ。

 以下に説明するのは、いまの自分のストーリー(それはとらえがたく、意識下に埋もれていることもある)を確かめたうえで、より真実に近く、インスピレーションの湧くストーリーを見つけるための訓練方法である。

 この訓練は、アントニア・フレイタスの研究グループによる「解釈レベル理論」に基づいている。仕事における作業や行動を1つひとつ取り上げ、4回「なぜ?」と自問するのである。この訓練が促すのは、(1) 自分の行動の理由について、みずからにどのようなストーリーを語っているかを確かめること、そして (2)自分の活動について、より高レベルかつ有意義な解釈をつくり出すことである。

 まず、自分がどのように時間を過ごしているかを把握しよう。より実際に即したものとするため、カレンダーを使うとよい。典型的な1〜2週間を選び、その間に行う活動を1つひとつ書きとめていく。おそらく、4〜5種類の「大きな」活動が時間の7~8割を占めており、頻度の低い活動、あるいは時間のかからない小さな活動もたくさん出てくるだろう。

 それぞれの活動について、なぜ自分がそれをしているのかを、4回自問してみよう。たとえば活動の1つが、パフォーマンス・レビューのために部下と面談することだとしよう。そこで「なぜ私はこれをするのか」と自問し、頭に浮かぶ答えを注意深く聞こう。こんな答えが聞こえるかもしれない。「年2回、やらなくてはいけないから」。あるいは、こんなものかもしれない。「部下に本人たちの現状を知ってもらいたいから」

 どんな答えでもそれを書きとめ、2度目の「なぜ?」を自問する。「なぜ、年に2回しなくてはいけないのか」、あるいは「なぜ部下に本人の現状を知ってもらいたいのか」

 その答えは平凡なものかもしれない。たとえば、「それが私の仕事の1つだから」とか、「レビュー文書を提出しないと人事部が昇給してくれないから」。あるいは、あなたをインスパイアする答えが出てくるかもしれない。たとえば、「キャリアの目標にどうすれば到達できるか、部下に知ってもらうため」

 さらに3度目だ。「なぜ昇給しなくなることを気にしているのか」、あるいは「なぜ、キャリアの目標に到達する方法を知ってもらいたいのか」

 こんなふうに4回、自問を繰り返す。肝心なことだが、これはあなたの心の中だけで行うのであって、誰かに感心してもらうために行うのではない。だから心に浮かぶストーリーに基づいて、正直に答えるようにしてほしい。

 この段階で目指しているのは、あなたが自分の置かれた環境から、どのようなストーリーをつくり上げてきたかを確かめることだ。つくり上げてきたストーリーが「真実である」とは限らないし、自分で変えられないものでもない。ただ残念ながら多くの人は、みずからの行動を自分自身がどう解釈しているかさえ、まるで意識していない。しかも、ストーリーを確かめたところで、格段自分を誇らしく思えるようなものではないかもしれない。