従来型CSRからCSVへ
成長のための投資と捉える

 続く基調講演では、ヤマトホールディングス取締役会長の木川眞氏が登壇し、同社のCSV活動について披露した。2019年に創業100周年を迎えるヤマトグループは、木川氏が社長に就任した2011年に2019年をターゲットに見据えた長期経営計画を策定し、成長戦略の柱の一つとして明確にCSV活動を盛り込んだ。

ヤマトホールディングス株式会社
取締役会長
木川 眞氏

 計画策定当時、物流業界を取り巻く環境変化について、「物流のボーダーレス化」「Eコマースの拡大」「デジタル技術の進化」「少子高齢化など社会的課題の顕在化」という4つの仮説を打ち立てた。これらに基づいて検討された長期戦略は、成長戦略としてのグローバル展開の強化と、社会的課題の解決に貢献する地域密着型のサービス展開の2つの軸がある。

 「当社は個人向けの宅急便事業を成長エンジンとしてきたが、次の100年を考えると、日本に留まっていたのでは成長が止まってしまうため、よりグローバルに事業展開をせざるを得ない。

 一方、国内では高齢化、過疎化といった人口動態の急激な変化に伴い、生活者を支援するサービスへのニーズが急速に高まりつつあることかから、社会的インフラの担い手としてこれに応えていく必要があると考えた」と木川氏は振り返る。

 グローバル展開の強化を支えるのが、「バリュー・ネットワーキング」構想だ。スピードと品質を向上させながら、コストはリーズナブルに抑え、総在庫量の圧縮などを可能にする付加価値の高い物流改革を実現するもので、大規模な投資を行い、「羽田クロノゲート」「沖縄国際物流ハブ」、各ゲートウェイなどの物流ネットワークを革新し、顧客企業の物流の最適化をサポートする。

 もう一つの戦略が、地域活性化の取り組みである「プロジェクトG」だ。

 「従来、地域サービスは行政が担ってきた。しかし、地方自治体の財政悪化や高齢者の増加などにより、サービスの継続が困難になると予想される。そこで、ヤマトグループが保有するLT(物流)・IT(情報)・FT(決済)などのプラットフォームをオープン化し、行政や地域住民、生産者、NPO、さらには同業他社にまでも自由に使ってもらうことで、新しい形の地域活性化につなげていくのが、プロジェクトGのコンセプトだ」、と木川氏は語る。

 全国20万人、1日当たり500万回もの顧客との対面接点を持つセールスドライバーを活用することで過疎地における見守り支援を行っているほか、路線バスの空きスペースを有効活用した客貨混載、都市部における生活支援、国際クール宅急便を活用した、地域の農水産品の海外への販路拡大支援など、行政サービスの一部を代行する事例が急増している。

 プロジェクトGが本格稼働して約5年、いまでは地方自治体からヤマトグループに直接相談が持ち込まれるなど、高い評価を得ているが、企業収益には貢献しているのだろうか。

「従来型のCSRでやると、利益は度外視となる。ボランティアだと長続きしないので、プロジェクトGの実施にあたっては、現場の社員に3つの条件をつけた。1つ目はサービスの押し売りになっていないか。2つ目は地元の企業と協働できるか。そして3つ目は補助金がなくても永続的にできるか」

 従来型のCSRは本業から離れた社会貢献活動であり、コストと捉えられがちだ。対するCSVは本業を通じた社会貢献であり、「成長のための投資という考え方に基づいて取り組むべき」と木川氏は力を込める。

 さらに「SDGsやESG投資などを、グローバル企業の経営評価基準に組み入れるのが当たり前の流れになっている。それを実践するために背伸びをしてはいけない。欧米流のやり方を押し付けられるのではなく、日本的なやり方、本業の上に依って立つCSVがあるはずだ」と締めくくった。