病理ネットワークをAIで高度化し海外の支援も

――次世代ヘルスケア・システムのデータ基盤として検討されているのが、「PeOPLe(Person centered Open PLatform for wellbeing)」ですが、どんな特徴がありますか。

 個人を軸にあらゆる医療情報をオープンに活用することを目的としたプラットフォームで、たとえば、あるデータに関しては、ユーザーの個別同意を取り企業が経済活動に活用したり、あるいは公共的な目的であれば、学術関係者に利用を制限してオプトアウトで活用することもできます。

 個人を軸にデータをつないで、フィードバックする際には、マイナンバーカードを利用します。これまで世帯ごとに振られていた被保険者番号を個人単位化し、マイナンバーにひもづけることによって、マイナポータルを活用し、本人が情報を閲覧できるシステムを構築します。まずは健康診断データをマイナポータルに入れていく予定です。健康診断を受けても、前年の数値を覚えている人は少ないものです。今後は健康を考えるうえで、断面的なスナップショットの評価だけでなく、個人差を踏まえた経時的な変化も大切になります。最初のステップとして健診データを時系列につなぐだけでも、活用価値は高まります。

 健診データの先には、レセプト情報や介護データベースといったさまざまな公的データベースを連結し、介護予防の施策や医療・介護のサービス提供体制の研究にも活用していくことが可能です。今後は公的データだけでなく、IoTから得られるさまざまなライフログ、センシングデータも活用して、人々のサポートに活用していくことも可能になります。

――厚労省のデータヘルス改革では、保健医療分野におけるAI活用の推進も検討されていますが、期待される成果は。

 いま世界中で評価・分析のツールとしてAIの開発が百花繚乱の状態で、専門家の仕事を奪うといった議論も盛んに行われていますが、そもそも日本では病理医が不足していて、彼らのなかにはAIをチューンナップして、自分の業務の一部を代替してほしいと考えている人も少なくありません。

 技術導入に前向きな専門医のなかには、クラウド診断を積極的に導入する人もいます。従来は、診断の部分とクラウドに検体を上げる部分の診療報酬が分かれていなかったため、なかなかうまく機能しなかったのですが、今年の4月に診断報酬が改定されたため、今後はシェアリングエコノミーの仕組みを使えば、高額な設備投資を行わなくても、稼働率の低い施設に検体を送ることで専門医による診断を受けることが可能になると思われます。さらに、ここでAIが活用できるようなると、簡単な診断はAIに任せて、難しい診断は専門医が行うこともできます。

 AIをはじめとした先端技術により日本の医療が効率化すれば、海外をサポートしていくことも考えられます。たとえば、日本の病理ネットワークをAIで高度化して、世界とつながり海外を支援していきます。途上国から中進国、先進国まで、それぞれの経済成長に見合った医療サービスを提供し、対価をいただくことができれば、自らの社会保障の重みで押しつぶされそうな日本の未来を支えることになるかもしれません。危機的状況にある日本の医療が、データヘルス改革によって成長産業に位置づけられると言ったのは、そうした理由からです。