「経営」のゲームチェンジを実現する5つのアクション

 続いてアビームコンサルティング執行役員の宮丸正人氏が演壇に立ち、「日本企業の“稼ぐ力”と“経営”のゲームチェンジ」のテーマで特別講演を行った。宮丸氏はリーマンショックから10年が経過し、日本企業の稼ぐ力は改善しつつあるが、一方で、デジタル革命が既存企業の稼ぐ力に大きなインパクトをもたらしている。デジタルテクノロジーの進化による革命的かつ破壊的なインパクトは、既存の競争優位の短命化をもたらし、競争環境のパラダイムシフトを加速させている、と現状を分析した。

アビームコンサルティング執行役員 宮丸正人氏

 日本企業が今後、稼ぐ力を向上させるには、過去10年間で取り組んできた戦略転換や企業変革を進めるだけでは不十分だ。パラダイムシフトを乗り越えるために、経営そのものをゲームチェンジする必要があると、日本の上場企業の利益や売上げの推移等のデータをもとに解説した。その上で、経営をゲームチェンジするために、どのようなアプローチが可能なのか、また日本企業はどんな戦略を持つべきか、アビームの考え方を紹介した。

 競争優位が維持できている間に次のイノベーションを起こさなければ、稼ぐ力は増えない。“継続的な価値創造のメカニズム”を構築する必要がある。それにはブルー・オーシャン・シフトがすぐれたアプローチになるが、使いこなすためには日本企業のマネジメントサイドの変革を行わないと成果を出し切れないと述べ、「経営」のゲームチェンジを実現する次の5つのアクションを示した。

1.未来定義(=定める力)――10~15年後の未来を定める。

2.0→1000のプロセスをマネージする――新たな競争優位をつくるプロセスを高速で回す。

3.決断力と実行力のバージョンアップ――取込む力、止める力、使う力を高める。

4.ステークホルダーからの共感(=伝える力)――経営をストーリーとして伝える。

5.チームで経営をゲームチェンジ――ひとりのスター経営者ではなく、チームが経営を変革する。

 最後は、「イノベーションを起こすのではなくイノベーティブなチームに変えることが重要だ」と締めくくった。

スタディサプリのブルー・オーシャン・シフト

 続く特別講演は、リクルートマーケティングパートナーズ社長の山口文洋氏による「スタディサプリが切り開くブルー・オーシャン」。スタディサプリ(当初の名称は「受験サプリ」)は月額980円で、カリスマ講師の授業動画が見られるサービスである。昨年度で74万人のユーザーを獲得したこの新規事業の発想と実行にはブルー・オーシャン戦略の考え方が大いに役立ったと語り、そのプロセスをブルー・オーシャン・シフトの5つのステップを使って紹介した。

リクルートマーケティングパートナーズ社長 山口文洋氏

 ・ステップ1 準備に取り掛かる
 生徒は授業を受けるのなら教え方が巧みなカリスマ講師から学びたいという意識が強い。そのため事業を開始するに当たり、カリスマ講師たちを巻き込む必要があった。教育環境格差を解消するという事業のビジョンを語って、彼らの共感を得た。

 ・ステップ2 現状を知る
 日本の塾・予備校を徹底調査し、その価格構造を知るとともに、講師のレベルに大きなばらつきがある現状を知った。

 ・ステップ3 目的地を思い描く
 高校で30%、小中学校で半分を占める「塾に行きたいが経済的、地理的な理由で通えない子供たち」に狙いを定めた。教室や自習室などハード面は持たないことに決め、サブスプリクションサービスにすることをこの段階で決定した。

 ・ステップ4 目的地への道筋を見つける
 圧倒的な低価格のビジネスモデルを具現化するため、他業界からヒントを得た。教育業界にないが他業界にあるものを取り入れた。そのために大きな投資を行い、他社が真似できない参入障壁をつくろうと、料金はHulu等を参考に月額980円に抑えた。

 ・ステップ5 戦略を絞り込み、実行に移す
 最も勉強する層である高校3年生に絞り込んでスタートし、ブランド名もあえて「受験サプリ」とした。その後、ステップを踏んで他の年齢層や学校、社会人にまでサービスを広げてきた。


 山口氏は、ブルー・オーシャンであり続けるのは難しいが、ブルー・オーシャン的な考え方で改めて既存事業を眺めると、新しいコンセプトを持ったブルー・オーシャンが生まれている場合がある。ブルー・オーシャンを狙って始めれば隣にあるレッド・オーシャンにおいてもオリジナリティあるサービスがつくる可能性がある、と述べた。