この問題には、以下の3つの側面がある。

1. 社員は勤務時間中にたえずメールをチェックする習慣が身についているので、退社してもこの行動パターンを「オフにする」ことができない。

2. リーダーにも1で述べた傾向がある。加えて、勤務時間外のコミュニケーション方法について何を期待しているかを、言葉にして部下に伝えない。こうしたリーダーの行動パターンの結果、つまり自分たちの習慣が企業文化を形づくっていることに気づいていない上層部の言動の結果、社内に暗黙のルールや慣習が生まれ、全社に広がる。

3. リーダーや他の社員が勤務時間外にメールを送信していれば、自分もそうすべきだとすべての社員が思い込む。

 これら3つの側面が互いに助長し合って、加速するサイクルを生み出し、ストレスと不安がはびこる社風の一因になる。それは好ましくない社風だと、リーダーであるあなたが考えているのなら、勤務時間外にもメールに対応すべきだという思い込みに起因する不安から、部下とその家族を守ることができる。

 そのソリューションは、上記3つの側面すべてに対処しなければならない。

 第1に、リーダーであるあなたが部下に抱いている期待を明確にしよう。前述の例のように、あなた自身が期待していることと、「上司が期待している」と部下が思い込んでいることに、大きなズレがある場合がある。

 どうすることを期待されているかが明らかでなければ、部下は憶測することになる。あなたが期待を明言すれば、皆のためになる。たとえば、こんなふうに言うことができる。「仕事を離れる休息の時間が大切です。社員の皆さんは、勤務を終えた夜や週末、休暇中は仕事のメールから完全に離れてください。緊急事態が発生した場合は、電話かチャットツールで連絡を取ります」。

 こうした発言で大事なのは、1つには大局的な期待を明らかにすることだ(前述の例では、休息時間とメールを遮断することが重要だと伝えること)。加えて、状況に応じてどのコミュニケーション手段が適切かという、小局的な期待を設定する助けにもなる。

 もう一歩踏み込んだ設定をすることも、お勧めする。具体的には、勤務時間中のコミュニケーションについても、ガイドラインを作成して、その内容を明確に伝え、順守することだ。

 どのような状況でどのコミュニケーション手段が適切であるか、概要をまとめよう。たとえば、勤務時間中に発生した緊急の課題や時間的制約のある課題について、メールでやり取りするのが通常ならば、社員はいつもメールを閉じられない。ほかにより重要な仕事を済ませなくてはならない場合でも、そうだ。

 メールに常に注意を払っている必要があるので、ほかのタスクに集中することもできない。こうした注意散漫な状態が集中力を低下させ、アテンション・マネジメントを実践する妨げになり、忙しいわりに達成感を味わえない毎日の原因になる。電子メールはそもそも、同期型コミュニケーション向けではなかったはずだが、現実にはその手段として使われてしまっており、それがこうした悲劇を招いている。

 むしろ、部下にこう話すべきだ。「緊急の事態や時間的制約のある問題が発生した場合は、(勤務時間外の場合と同様に)チャットツールでメッセージを送信するか、電話をかけるか、あるいは直接話してほしい」

 日時にかかわらず、メールの使用は、時間的制約のないコミュニケーションとルーチンのリクエスト向けに限定すべきことを明確にしよう。こうすることで、勤務時間中に常にメールに気を取られているという状態を防ぐことができるし、勤務時間外にもメールをチェックしなくてはという、強迫観念が最小限に抑えられる。

 重要なのは、あなた自身がこの行動パターンのモデルになることだ。緊急のリクエストを記載したメールを部下から受信したら、意図を部下に正しく知ってもらう唯一の方法は、そのメールをすぐに開封せずに、より適切な手段を使うよう部下に強いることだ。

 コミュニケーション・ガイドラインの対象範囲は、メールおよび「緊急か、緊急でないか」の問題に限定されない。たとえば、何のために会議を開くかについて、アサナ(Asana)やベースキャンプK(Basecamp)、トレロ(Trello)といったプロジェクト管理ツールの最適な利用法について、どのような状況で社内Wikiを使い、どんなときにスラック(Slack)やツイスト(Twist)のようなチャットツールを利用すべきかの指針を設定できる。これが明らかになれば、社員が対応しなければならないメールの数を減らすのに役立つ。

 明確なガイドラインがあれば、社員は安心してメールソフトを閉じるなど、テクノロジーに振り回されないようにする余裕が生まれ、重要な仕事に全神経を集中できるようになる。ちなみに、このように仕事に没頭する状態は「ディープ・ワーク」とも呼ばれている。

 すなわち、リーダーはみずから、夜間にメールを送受信する習慣を変え、そのメリットを実感する必要がある。また、誰一人として、たとえリーダーでさえ、休暇中に仕事の確認を求められるべきではない。そんなことはあなたの会社では不可能だと思えるのなら、休息時間を云々するより、ずっと深刻な問題が潜んでいるおそれがある。

 これらの変革を実施するうちに、企業文化が目に見えて変わっていくはずだ。「常時オン」の状態でメールに24時間年中無休に接続していれば、生産的であるように錯覚するかもしれない。だが、バージニア工科大学の研究結果が示すように、実際には社員のストレスを増大させ、家庭内の不和を引き起こし、結局のところ、生産性の低下につながる。

 このような状況では、最高の人材を継続的に採用し確保することも、会社の成功を持続的に支えることも、到底できない。


HBR.org原文:Protecting Company Culture Means Having Rules for Emails, September 17, 2018.

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