グーグルは競争のあり方を変え、
投資家の考え方を変えた

 グーグル・ファイバーの実験により、競争の基本前提、つまり「この市場は固定的なインフラ産業である」という従来の考え方が見直されることになった。隣接市場を独占していた、グーグルという強力な新規参入者がいつの間にか現れ、競争力のあるサービスを開始し、都市から都市へとサービスを拡大し、既存事業者の投資と新たな競争をけしかけたからだ。

 全米ブロードバンド計画の立案者が望んだ通り、ギガビット・インターネットの実証実験への強い関心は、インフラ投資の停滞を解消し、光ファイバーの敷設は、おそらく2年は早まった。グーグルに触発された既存のプロバイダーによる追加の設備投資は、70~100億ドルと推定されている。

 加えて、とりわけ重要なのは、グーグル・ファイバーの参入により、投資家の考え方も変わったことだ。

 ベライゾンが市場の需要に先んじてFiOSに投資した際、ウォール街は厳しい反応を示した。もし他の既存事業者が、安価なサービス向上策があるにもかかわらず、ケーブルに対抗して銅線ネットワークの改良を実施していたら、株価は下落しただろう。同様に、ケーブルがパフォーマンスと市場占有率の双方でDSLをすでに凌駕していたとき、ケーブル事業者がさらに技術改良を試みていたら、やはり株価は落ち込んだと思われる。

 その一方で、投資家は、グーグルがプロバイダー市場に参入しても悪い反応を示さなかった。都市とその住民たちは、ギガビット・インターネットという構想を意外にも受け入れた。すると投資家は、グーグル・ファイバーによってもたらされたチャンスと脅威に既存のプロバイダーが対処することを許容したのだ。

 同時に、グーグルのブロードバンド市場参入に伴い、国、州、地方の長年にわたる規制上の非効率性が、敷設の遅延とコスト増を招いてきたことが判明し、それがあらゆる関係者のメリットにつながった。無駄な手続きが改善されて、プロバイダーは設備投資効率を高め、消費者は新しいサービスの恩恵に与る。都市では、産業の活性化と前向きなマスコミ報道が見られた。

 米国を含む多くの経済圏で、さらに高額な第5世代移動通信システムの導入が進むなか、グーグル・ファイバーの教訓を心に止めておくかどうかが、勝者と敗者を分けることになる。

第5世代移動通信への示唆

 5Gが約束する高速化と新しいアプリケーションにより、モバイル・ブロードバンドは光ファイバーにも対抗できるようになるだろう。その導入はグーグル・ファイバーの先例に倣い、都市ごとの敷設という新しいモデルで実施される可能性が高い。地方自治体は、許認可、土地の利用法、権利付与、電波塔の立地、料金など、敷設の監督方法を再考しなければならない。

 そうした実例は、すでに存在する。たとえば、敷設権のレンタル料や電柱添架料といった継続的に発生する料金を、いくつかの都市は長年にわたり、予算不足を穴埋めするための豊かな資金源と見なしてきた。ところが、いまではプロバイダーから強腰な交渉を受けている。

 通信会社は取引に喜んで応じるが、譲歩を求めすぎると彼らは撤退してしまう――ボストンやサクラメントなど、初期段階の5G投資を確保した都市の自治体は、このことに気づいているのだ。

 たとえば自治体は、グーグル・ファイバーのときと同様に、競争力のある料金を提供しなければ、地域開発と競争力の重要な源泉である、新しいネットワークへの企業投資が遅れるおそれがあることに気づきつつある。自治体は実際、長期的な目標と短期的な手数料最大化のバランスを取ることを学んでいるのだ。

 今回も、通信事業者とその投資家との包括的な官民パートナーシップを早期に築くことの大切さに気づいたコミュニティが、勝者となるだろう。

(少なくとも名目上は)失敗に終わった実験のように見えるプロジェクトにしては、見事な遺産を残したものである。これも、デジタル革新によって劇的に変化している多くの産業で当てはまる、「まったく異なるルール」の一例なのだ。


HBR.ORG原文:Why Google Fiber Is High-Speed Internet’s Most Successful Failure, September 07, 2018.

■こちらの記事もおすすめします
イノベーションの成果は、何で測定すべきか
どんな瞬間も学びに変える、挑戦にどん欲な社員を育てる方法
破壊的イノベーションを超えるビッグバン型破壊

 

ブレア・レビン(Blair Levin)
連邦通信委員会(FCC)による2010年の全米ブロードバンド計画チームを主導した。その後、主要な研究大学のある都市でのギガビット・インターネットの導入を促進するGig.Uを設立。現在はブルッキングス研究所の非常勤上級研究員で、ニュー・ストリート・リサーチの政策アドバイザー。

ラリー・ダウンズ(Larry Downes)
ジョージタウン大学ビジネス・公共政策センターのプロジェクト・ディレクター。『ビッグバン・イノベーション』の共著者。