今日の発展途上企業が、資金よりも必要としているものがある。それは、専門家人材、コネクション、戦略的関係、そして投資家である。自社のビジネスモデルを理解してくれて、他の投資家に複数段階の資金提供を説得できる投資家だ。

 このような企業のニーズをよく満たしてくれるのは、受動的な公開株投資家よりも、事情通の未公開株投資家とのパートナーシップである。後者は前者とは異なり、次のような形で投資先に価値をもたらす

 洗練された知識ベースの提供、経営者の個人的な情報への直接的なアクセス、会社の戦略計画へのタイムリーなフィードバック、取締役会への参加を通じての積極的な経営参画、外部の科学者らとの接点づくり、戦略的パートナーシップの特定・促進、などである。かつては社内の機能であった、人事、マーケティング、製造、流通、会計などの適切な外注先を見つける手助けをしてくれるのも、未公開株投資家だ。

 したがって今日の新興企業は、自社を育ててくれる未公開株投資家の手の内に、より長く留まろうとする。資本に飢えた、かつての製造企業はそうではなかった。たとえば、ウーバーとエアビーアンドビーは、評価額が100億ドルに達したにもかかわらず、株式未公開のままである。

 財務報告における限界(現在の財務報告モデルでは、デジタル企業が創出する価値を正確に反映できない)も、デジタル企業上場の後押しとはなっていない。公開株の投資家は往々にして、目先の利益を上げることで頭がいっぱいである。最高財務責任者はますます、デイトレーダーがデジタル企業を正しく評価できるのかを疑問視している。前述したマスクのコメントもそうだが、デルが下した非公開化の決定について考えてみてほしい。

 すなわち、発展途上のデジタル企業は、公開株の投資家よりも自社のビジネスモデルをよりよく理解でき、より辛抱強く複数段階の出資をしてくれる、未公開株投資家を探し求めているのだ。

 さらに、新規株式公開は費用がかさむのみならず、経営のための時間と労力も取られる。したがって、今日の発展途上企業が、20世紀中頃のインフラ集約的な企業よりも株式未公開のままでいる傾向が高いというのは、理にかなった結果である。

 では、米国の証券取引において、上場企業数を増やすには何ができるだろうか。だが、それはそもそも目指す価値のある目的なのだろうか。

 株式市場は経済活動のバロメーターとされ、健全なIPO市場は起業活動の繁栄の証とされることは、しばしばある。しかし、近年の上場企業数の減少が米国経済に悪影響を及ぼしている証拠はない。上場企業の時価総額総計は増え続けており、失業率は対応が可能な程度で留まり、米国は技術的進歩においてリーダーシップを保っている。唯一の変化は、未公開株投資ファンドの取引がかつてなく増えていることと、ベンチャー投資家の出資を得てからIPO市場に参入する企業がこれまでより増えていることである。

 公開株の投資家も、この流れに乗じている。いま機関投資家は、一般投資家の貯蓄を未公開株投資ファンドに割り当て、デジタル企業への投資を増やしている。

 要するに、上場企業数の減少は、米国企業がその組織構造を、変わりゆくビジネス戦略にうまく適応させている表れなのだ。それは称賛すべきことであり、心配の種と見なすべきではない。


HBR.ORG原文:Why We Shouldn’t Worry About the Declining Number of Public Companies  August 27, 2018

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ビジャイ・ゴビンダラジャン(Vijay Govindarajan)
ダートマス大学タック・スクール・オブ・ビジネスのコックス記念特別教授。ラブ・ラママーティとの共著に、Reverse Innovation in Health Care(未訳)がある。

 

シバラム・ラジゴパル(Shivaram Rajgopal)
コロンビア・ビジネス・スクールのロイ・バーナード・ケスター・アンド T. W.バーンズ記念会計・監査講座教授。同校の研究副学部長も務める。主な研究分野は、財務報告や役員報酬の問題。会計・財務の分野で多くの論文を発表している。

 

アナップ・スリバスタバ(Anup Srivastava)
カルガリー大学ハスケイン・スクール・オブ・ビジネス准教授。
 

 

ルミニタ・エナケ(Luminita Enache)
カルガリー大学ハスケイン・スクール・オブ・ビジネス助教授。ニューエコノミー企業の資産公開について研究している。