ジョブズが最期まで
気にかけていたシリ

 第2論文は、元シリ開発者が語る音声AIアシスタント論です。アレクサを搭載するアマゾン・エコーが、ライバルのアップルにおいてどのように受け止められたかという話から始まり、「なぜ世界に広まったのか」を分析しています。

 その上で、アップルの目指すビジョンを引き合いに、音声AIアシスタントが抱える5つの課題と、その一方で持つビジネスインパクトの可能性を説きます。「スティーブ・ジョブズが最期まで気にかけていた機器がシリを搭載した電話機だった」というエピソードを含めて、最新テクノロジーとビジネス現場の両方に精通する筆者なればこその、示唆深い論考です。

 特集3番目は、プラットフォーム企業の雄、マイクロソフトの日本代表の立場にある平野拓也氏へのインタビューです。2014年にCEOに就いたサティア・ナデラ氏が、従来のPCファーストから、モバイルやクラウドファーストに舵を切り、さらにAI/クラウド時代に入って、同社や日本マイクロソフトがどう変革されつつあるのかを語っています。

 マイクロソフトはまさに劇的に変わっているわけです。この変革についてさらに詳しくお知りになりたい方には、『マイクロソフト 再始動する最強企業』(上阪徹著、ダイヤモンド社)をお薦めします。また、アマゾン、グーグル、アップルなどのAIアシスタントをめぐる競争については、『デス・バイ・アマゾン テクノロジーが変える流通の未来』(城田真琴著、日本経済新聞出版社)で詳述されています。

 こうしたテクノロジー革新に対して、企業は顧客戦略をどう対応させるべきなのか。解を提示するのが、一橋大学大学院准教授の藤川佳則氏の論文「顧客が顧客戦略を動かす時代」です。

 論文ではまず、そもそもマーケティングとは何か、コンテンツ・メディア・デバイスのデジタル化が進む中で何がどう変わってきたか、今後AIアシスタントが家庭に浸透していくとどうなっていくのか、について論理的に解説しています。

 そして、従来のマーケティングモデルであるAIDA(認知、興味、欲求、行動)やその改良版では捉えきれない、AIアシスタント時代の新たなマーケティングアプローチ「アーチモデル」を提案します。
 
 AIアシスタントは、人間が発するアナログ言語を、瞬時に、機械が理解できるデジタルデータに転換するものです。PCのキーボードやマウス、スマホのタッチパネルに比べて、より直接的な人と機械の意思疎通を可能にしています。このプラットフォームは、近年、最もビジネスインパクトの大きいテクノロジーであり、システムであると考えます。

 特集以外では、上述のようなGAFAなどハイテク企業が支配力を強める弊害を指摘する論文「企業間競争の減退が米国経済を蝕む」、サイバーテロに対する防衛策の論文「サイバーセキィリティの深刻な現実」(この論文が示す現実は絶望的ですが)が秀逸です。

 また、巻頭論文「職場の男女格差はどのように生まれるのか」は、今日における企業の最重要課題を扱っており、多くの経営者やマネジャーに読んで頂きたい論文です。(編集長・大坪亮)。