日本は存在感が薄い。
発信がなければチャンスは来ない

 2日目の中国の李克強首相の講演は、米中貿易摩擦の中での対応方針など、国内外へのメッセージ性が強く、欧州と中国の協調をアピールする機会を十分に活用していることが伺えた。 

 スイス大使館が主催するベンチャーのピッチコンテストも、盛況だった。スイスからのスタートアップ9社(分野はヘルスケア、ドローン、人工知能など)が3分間ピッチを行い、参加者に投票のリモコンを渡して、優勝を決定するというものだ。参加者のプロフィールを見て、ベンチャー投資家などに招待を出していたのだろう。スイスとしても中国のテクノロジー、そして市場は魅力的なのだ。

 セッションの一番人気は、中国のアリババのCEO、ジャック・マーが登壇したものであった。引退を発表した直後で、どのような話をするかが注目されていた。300人ほど入る会場で、最終日のセッションにもかかわらず満席になり、会場に入れなかった人も多数いた。マー氏の間近での講演は非常に迫力があり、元教師の経験が人を育てるという企業経営の最も大事なところに非常に活きたことを熱弁していた。

 日本からは、経済産業省が主催するJスタートアップや、特定のベンチャー投資家からの推薦を経て選考に通過したスタートアップ15社が参加した(世界のスタートアップ全体では、300社ほどの参加)。

 また、日本に関するセッションは、東京大学大学院の暦本純一教授が組成したセッション「機械と人間の関わりをどうデザインするか」など少数だった。東京大学の研究者がドローンなどのデバイスや、スポーツ選手など他人の視点を使って人間の体験を拡張する未来や、肌に直接貼れる有機電子回路によって健康情報をモニタリングできる未来などの研究を紹介し、パネルディスカッションを行った。

 2020年の東京オリンピックの取り組みについてのセッションもあり、林芳正大臣が参加して、英語でディスカッションしていたのは良かったが、内容は官僚が書いたシナリオの範囲にとどまり、オリンピックによる経済や文化、国民の健康への影響を、どう効果検証するかについての言及はなかった。

 全体として、日本の存在感は、非常に低い。欧米からの参加者で、今回が初めてのアジア訪問という場合、これがアジアの縮図と感じて帰国されてしまうのではないかと危惧された。

 筆者も、事務局から要請があり、日本の強みであるブロックチェーンに関する登壇者を1名推薦し、採択されたが、日本のプレゼンスを高めるには、より多くの登壇者を出す必要がある。

 欧州は、古く、イノベーションやテクノロジーにおいて米国に劣後している、という印象を払拭するために、最新のテクノロジーをアピールするとともに、人工知能などテクノロジー業界では必須の消費者データが扱いやすい地域であることを印象付けていた。

 日本の政治家やビジネスパーソン、研究者は、日本語でも構わないので、世界のテクノロジーの潮流に食い込むことにもっと注力すべきである。刻々と変化するグローバルのテクノロジーの流れにおいては、沈黙は金という格言は成立しない。オープンイノベーションも対話から始まるもので、何をしたいかを発信しない限りは、コラボレーションのチャンスは生まれない。