自社で新規事業をつくれない企業はオープン・イノベーションでも成功しない

――取り組み姿勢のほかにも、オープン・イノベーションが成功するためには何が必要ですか。

 やはりトップの関与です。トップ自ら旗を振り、場の整備や仕組みの整備をきちんと行うことが重要です。トップの関与は、責任の所在の問題とも言い換えられるでしょう。

 そもそも私がオープン・イノベーションに関心を持ったのは、新規事業創出の観点からです。私の専門は経営戦略と技術経営で、新規事業が生み出せなくて困っている企業に足を運んで聞き取り調査や研修を行ったりもしているのですが、そのときに気づいたことがあります。それは、社内で新規事業が立ち上げられない企業は、オープン・イノベーションに取り組んでも成功しないということです。

 一つの会社で新規事業がうまくいかないのは、責任の所在があいまいなケースが多いようです。よくあるのは、現場の社員が「上司がはしごを外す」と言い、失敗の責任を押しつけられ、人事的にマイナス評価になるのであれば「やらない」という話。一方の上司は「現場がちゃんとやらない」と言うだけです。

 最近は、新規事業開発の評価をステージごとに行うステージゲート法も導入されるようになりましたが、この手法は評価基準がクリアになっていないと機能しません。新製品・サービスが導入される3年後の市場や収益への貢献度、技術レベルの到達度を現時点で明確に評価することは難しく、どうしてもすでに市場が存在するところや土地勘のある領域に留まってしまうため、競争優位を築くことができません。

 新規事業の創出には、市場と技術という2つの不確実性が存在し、そこへの対応が問われます。不確実性の高いところに出ていくにあたって、1社でやるのも難しければ、オープン・イノベーションになると、利害関係やバックグラウンド、品質水準や投資の判断基準が異なる複数の企業体が関わることになり、責任の所在はますます複雑になりますから、早期撤退に追い込まれるのも納得できます。

――欧米の成功事例から学べることは。

 オープン・イノベーションの形態は、組織間の関係性から「サプライチェーンの補完」と「ビジネス・エコシステムの形成」の2つに類型化されるのですが、前者の成功事例としてはP&GやIBMなどが挙げられます。P&Gは取り組み姿勢もプッシュ型で何をすべきかがはっきりしていて、明確な戦略の下で自社に足りない資源を外部のサプライヤーから調達しています。サプライチェーンの一部を外部の企業と連携することで新たな価値創造につなげるパターンは決して特殊な手法ではなくて、日本企業も同様にできるはずです。

 後者は、アップルやグーグルが提供するデジタル・プラットフォーム上で企業を巻き込みビジネス・エコシステムを形成するパターンが挙げられます。日本でもレベルは異なりますが、JR東日本がベンチャー企業と組んで、大宮駅でコンビニエンスストアの無人店舗の実証実験を行ったりしています。比較的優位なプラットフォームを持っている企業は、異業種の企業と連携し、個々の得意業務を担当することで新規事業創出の可能性が出てくるでしょう。