第1のステップとして、仕事の質と量とのトレードオフに誰もが直面するという事実を認めよう。

 1日の勤務時間を10時間から18時間に増やせば、成し遂げられる仕事の量は確実に増加する。単純な足し算だ。しかし、それは幻想でもある。

 というのも、少なくとも短期的には、より多くのタスクを終えられるかもしれない。だが、1日18時間労働を続けると、睡眠不足の弊害から仕事の質が下がる。18時間の勤務中は、片手を後ろで縛られたまま闘うボクサーの状態に似ている。1日18時間労働を続ければ、ミスが多くなる。いくつかは自分で気づくだろうから、その場合は時間を浪費するだけで済む。しかし、ミスの一部は見すごされ、あとになってはるかに大きな問題を生む。また、1日18時間労働を続けると、困難な問題をじっくり考えるという重要な機会も逸し、お決まりのソリューションを試すだけの無駄な努力を続けることになる。

 したがって、選択肢は実際のところ、次のどちらかだ。質の高い仕事をして充実した1日を過ごすか、それとも質の劣る仕事をしながら実に長い1日を過ごすか。たいていの人は、質の高い仕事で充実した1日を選ぶほうが幸せなはずだ。

 そうであるならば、毎日、仕事中にこう自問すべきだ。「夜の睡眠を十分に確保できるように、今日1日の仕事をここで切り上げたとしたら、世界の終わりのような一大事になるだろうか」。自尊心に惑わされることなく、正直にこの問いに向き合えば、答えはたいてい「ノー」のはずだ。そこで1日の仕事を切り上げて、夜、ぐっすり眠る時間を確保しよう。

 第2に、睡眠がいまいかに必要かを示す指標として、カフェインの消費量に注目するとよい。

 簡単に言えば、カフェインは睡眠の必要性を告げる脳内シグナルを遮断する。しかし、カフェインが生理的なニーズを満たしてくれるわけではない。体の要求に応えられるのは、睡眠を取ることだけだ。すなわち、カフェインは睡眠不足の問題を解消するというより、むしろ覆い隠すのである。

 だるさを感じることなく午前中を過ごすためにカフェインが必要だと感じるのなら、それは、睡眠不足の問題をただ隠ぺいしているだけだという重要な警告である。午後、再びカフェインがなければ乗り切れないと感じるのなら、それは2回目の警告だと受け止めよう。警告が積み重なるたびに、睡眠時間を確保するために、仕事をもっと早く切り上げるべき緊急性が高まっていく。

 第3に、孤独なスーパーヒーローにならないようにしよう。

 あなたはたしかに、重要な仕事をしている。誰もがあなたの代わりを務められるわけではない。だが、あなたの仕事の一部をこなせる人をチームに加えることはできる。

 仕事をみずから任せることを覚えよう。自分の睡眠を犠牲にする多くのリーダーは、自分の仕事をチームと分け合うことを渋るせいで、睡眠不足に陥る。その仕事を任せられるチームメンバーがいない場合は、既存のメンバーの中から適任者を育成するか、あるいは能力のある人を新たにチームメンバーに加えるべきだ。

 多くの人にとって、これは自分自身のエゴを克服することを意味する。人は往々にして、「これらの仕事を自分ほどうまくこなせる人間は他にいないから、自分がしなければならない」と自分自身に言い聞かせる。だが、自分で自分を褒めている場合ではない。むしろ、チームを育てることができなかった結果だと反省すべきなのだ。

 この問題を解決するには、リソースに制約のある環境でより多くのリソースを獲得するために、闘う必要があるかもしれない。苦戦することもあるだろう。だが、リーダー自身のリソースにも限りがある。持続不可能な長時間労働を続ければ、新たな人材を採用することよりも、ずっと大きな代償を支払うことになりかねない。本当に危機的状態に達するまで、気づかないだけなのだ(アリアナ・ハフィントンが仕事中に気絶して頬骨を折った話を参照のこと)。短期的な視点に立って、いままで通りを続けることで、自分自身を体力の限界まで追い詰めてはいけない。

 そして仕上げのステップとして、今日はどうやってまともな時間に仕事を離れるか、毎朝計画を立てよう。退社したい時間の5分前になって慌てて仕事を切り上げようとすると、おそらく失敗する。だが、計画を立てて1日をスタートし、その計画に従って仕事の優先順位を付けることは、長時間労働で夜の睡眠時間を削ったりしないという、あなたの決意をサポートする健全な仕組みとなる。

 もちろん、完璧な計画など存在しない。それでも、所定の時間までに職場を離れることに重点を置いた、この方法で計画を立てれば、ただ行き当たりばったりに試みるよりも、効果が上がる。

 こうした4つのステップに従い、夜の睡眠時間を確保できるように毎晩早めに職場を離れれば、勤務時間中の仕事の効率が高まる。そのうえ、仕事から離れた場面でも、幸福感が高まり、健康増進につながり、よりよい自分でいられるだろう。


HBR.ORG原文: You Know You Need More Sleep. Here’s How to Get It, August 27, 2018.

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クリストファー M. バーンズ(Christopher M. Barnes)
ワシントン大学フォスター・スクール・オブ・ビジネス准教授。経営学を担当。米空軍研究所の疲労対策部門に勤務した後、ミシガン州立大学で組織行動学に関する博士号を取得。