思い違い:ショッピングは、完全にオムニチャネルとなった。
実際:ほとんどの購買プロセスは、いまだにほとんどが単一のチャネルで生じている(ただし、変化しつつはある)。

 近年、業界では「オムニチャネル」が流行語となっている。つまり、消費者は一連の購買プロセスの中で、店舗への訪問とオンラインでの取引を組み合わせて利用すると考えられている。

 しかし、オムニチャネルの重要性は高まっているものの、我々の調査からは、購買プロセスの83%は、依然として単一チャネルで生じていることが示唆されている。なかでも従来型店舗を通じての購買が圧倒的に多く、今日のアパレル品購入の80%近くを占めている。

 アパレル企業と独立系の小売業者は、魅力的な実店舗づくりによる来店意欲の向上に、引き続き重点を置く必要がある。それを最終的に、ブランドの財務実績への大きな貢献要因にすべきなのだ。

 店舗が後塵を拝する分野の1つが、顧客に関する知識である。オンラインのサイトは、買い物客に関するデータをふんだんに持っている。過去の購買履歴が示す嗜好や、人口統計学的情報などだ。

 だが店舗では、店員が買い物客の嗜好をその場で推測しようと努める。これを解決するために、テクノロジーを利用してもよい。顧客が入店するたびにスマートフォンの操作をお願いして、店舗での体験をカスタマイズするのだ。この方法で顧客のプロフィールを利用すれば、店舗での体験やお勧めを個々人に合わせることができる。

 また、たとえば飲み物やその他のおもてなしのサービスを通じて、店舗での買い物を記憶に残るものにすべきだ。そのうえで、実際の購買はオンラインで完結してもらうよう促すのもよい。

思い違い:どの販売チャネルかは、重要ではない。
実際:消費者はオンラインで購入すると、よりたくさん買う傾向にある。

 購買プロセスが最終的にオンラインで完結する場合には、購入額が平均で25%高い。購入者が最初に実店舗を訪れ、のちにオンラインで購入する場合には、その効果はさらに顕著で、購入額は64%高い。

 その理由の1つは、無料配送にはたいてい一定以上の購入額が求められるので、顧客はその基準に達するために追加で購入品を選ぶことが多いからだ。もう1つの理由は、オンラインでは幅広い品揃えがあり、一等地の店舗に在庫を運ぶ必要もないことである。さらにオンラインでは、買い物客から収集した情報によって衝動買いを促し、購入額を増やす気にさせることが、実店舗よりも容易である。

 この恩恵を得るために、実店舗を持つ小売業者は、来店した顧客に自社ウェブサイトでの購入を促すための一貫した努力をすべきである。メンズウェアのボノボスは、これを実行している。買い物客が「在庫無し」店舗で商品を手に取って確認したのち、オンラインで注文するよう促しているのだ。

思い違い:オンライン購買は「即座に買える喜び」が大きい。
実際:オンラインでの購買プロセスは、店舗よりも時間が長い傾向にある。

 クリックだけで購入できるオンライン購買は、すぐに終わるプロセスのように思える。だが消費者は実際には、オンラインでは、実店舗で買い物する時よりも時間をかけており、しかも、あちこちに立ち寄っている。

 事実、オンラインで完結する購買プロセスの57%では、消費者が特定のショップで最終的にオンライン決済する前に、まずは別のウェブサイトを閲覧するか(29%)、実店舗に足を運ぶか(15%)、あるいはその両方(13%)を行っている。オンライン購買の残り43%はワンストップであり、同一のオンラインショップ内で買い物が終始している。

 つまり、オンラインの買い物客は、多くの比較をしているのだ。このためオンライン小売業者は、消費者の関心がある間に迅速に決済させるよう、より努力すべきである。

 買い物かごに入れたにもかかわらず決済にいたらない「かご落ち」に積極的にメッセージを送る、特定のサイトにロイヤルティプログラムを設ける、などが可能だ。手間を無くすことも有効だろう。我々の調査では、10%を上回る消費者が、あるウェブサイトの発送や返品のポリシーが気に入らないという単純な理由で買い物かごを放棄して、その商品を他で購入したことがあると回答した。

思い違い:どの小売業者かは、重要ではない。
実際:顧客の出費額は、ブランド直営の店舗やウェブサイトのほうが、複数ブランドを扱う店舗よりも著しく高い。

 ブランド直営の店舗やウェブサイトでの売上げは、他のチャネルでの同ブランドの売上げよりも86%高い。もちろん、利益率もより大きい。

 特定ブランド専門の店舗やウェブサイトは、顧客に対し、より価値が大きく差別化されたブランド感をもたらすと思われ、他での買い物よりも多額の出費を誘発している。また、直営チャネルは、ブランド・イメージを築き上げる(あるいは維持する)のにも役立つ。

 つまり、ブランドは、消費者を自前の販売チャネルに誘うことで恩恵を得られると思われる。ただしもちろん、デパートなどの小売パートナーとの関係を危うくしない方法で行うことが大切だ。

 1つ重要な戦略として、ブランド直営のウェブサイトや店舗でしか手に入らない、特別な商品を設けることが挙げられる。ナイキは、この戦略でまずまずの成功を収めており、さらに一歩進んで、顧客が同社のウェブサイト上で商品をカスタマイズできるようにしている。他のアパレルブランドも、差別化・カスタマイズされた商品を通じて顧客を惹きつけるとよいだろう。

思い違い:消費者は常に、何か新しいものを求めている。
実際:同じ商品か、似ている商品を買いたがることが多々ある。

 アパレルメーカーにとって「ファストファッション」がキーワードとなったとはいえ、消費者の多くは単に、すでに持っている服の買い替えを求めている。このことは肌着やベーシック服について特に当てはまるが、流行のスタイルに関しても、購買プロセスの目的の83%は同じ服のリピート購買であり、運動用品の場合は87%がリピートである。

 ブランドはある程度、意識を変えるべきである。成功とは、ある商品が好きな消費者を見つけて、その人たちに同じものを再度売り込むことを意味するかもしれない。真新しいものをつくればよいとは限らないのだ。商品ではなく、顧客を第一に考えるべきである。

 以前に買った商品の再購入を容易に促せる方法として、似た商品の推奨、新バージョンを知らせるターゲット広告、買い替えの時期と思われる商品のリマインダー、さらには定期購入サービスなどがある。ブランドは、顧客をよりよく知るためには、実店舗に足を運んでいる途中の顧客にオンラインにアクセスしてもらい、アプリを通じて商品に対する意見を述べてもらうとよいかもしれない。そうすれば、追跡してリピート購買を促すことができる。

 これら5つの知見に基づいて行動することは、テクノロジーによる解決にとどまらず、会社の組織構造にテコ入れする必要性を暗に意味している。実店舗とeコマースの営業をもっと連携させるだけでも、成果が得られるだろう。

 たとえば、顧客がオンラインで商品を購入したのちに、実店舗で返品した場合、社内の財務システムはそれを正確に反映する必要がある。ブランドと小売業者は最終的には、eコマースの部門を他の販売部門と統合すべきだ。いくつものチャネルが同じ顧客からの売上げを求めて争うのではなく、顧客を第一に据える構造へと転換するのだ。

 将来的には、買い物をどこで、どのようにするかは顧客が決定するようになるだろう。アパレル事業は、これをできるだけスムーズに、しかも儲かる形で、実現しなければならない。


HBR.ORG原文:5 Surprising Findings About How People Actually Buy Clothes and Shoes, June 06, 2018.

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ジェレミー・スポーン(Jeremy Sporn)
経営コンサルティング会社オリバー・ワイマンのニューヨークオフィスのパートナー。小売・消費財部門を担当。

ステファニー・タトル(Stephanie Tuttle)
オリバー・ワイマンのシカゴオフィスのプリンシパル。小売・消費財部門を担当。