中国企業との間で
価格競争に陥らない戦略

 特集の第3論文では、一橋大学大学院の名和高司特任教授が、前述した2つの論文の意義を、経営学の系譜や今日の経済環境から解説します。その後、名和氏独自の研究をもとに、日本企業の競争力の現状と発展の方向性を論じます。サドゥン氏やポーター氏があまり注目していない経済環境の変化を重視し、両者の論を止揚したところに示す「学習優位」論は説得力があります。

 サドゥン氏らがあらためて価値を認めた経営管理能力を再構築して、リーマンショックの危機を越え、好業績企業に転換したのがヤマハ発動機です。再興立役者の柳弘之会長に、その過程についてインタビューしたのが特集の第4論考です。

 実践した「損益分岐点経営」や「理論値経営」の解説では、会社全体の構造変革と現場でのカイゼン活動の具体事例が示されます。同社では業務効果を高めると同時に、ブランド価値を高めていきました。一連の再興過程を通じて、柳会長が競争戦略より大切なこととして挙げるのは、「やり抜く力」です。

 特集の第5論考では、高利益率経営を持続する安川電機の小笠原浩社長に、その要因を聞きました。同社は市場と事業、そして顧客を選択し、競合会社に勝ち、それを持続できるように複数の活動でコアコンピタンスを磨いています。これはポーターの競争戦略論に則っています。

 製造業では、コスト競争力の成長が著しい中国企業との競争が激しくなっていますが、同社は価格競争には陥らない戦略を取っていて、日本の製造企業全般にとって参考になるはずです。

 特集外の論文も秀逸です。「経営は論理だけでは語れない」は、「経営は科学」という論理思考に対して、哲学者アリストテレスの考え方を引き合いにして新たな思考法を示します。また、「アジャイル全社展開の実践法」、「リーダーが不都合な真実にたどり着く方法」は経営に即効性のある論文です。

 戦略論における別の権威であるINSEAD教授のチャン・キム氏が新著『ブルー・オーシャン・シフト』(ダイヤモンド社)の発行記念で来日して、10月10日に東京ミッドタウン日比谷で講演会を行います。

 キム氏の単独講演後、アビームコンサルティングの特別講演、リクルートマーケティングパートナーズ社長山口文洋氏の特別講演、さらには早稲田大学大学院経営管理研究科准教授の入山章栄氏をファシリテーターに迎え、シニフィアン共同代表の朝倉祐介氏、キム氏、山口氏の4人によるパネルディスカッションというプログラムです。詳しくは、このDHBRウェブサイトに掲載していますご案内をご参照頂ければ幸いです(編集長・大坪亮)。