●データに語らせる

 あるグループ内の規範を変えたいのであれば、「理由」を共有することから始める方法がある。先に述べた研究結果を共有しよう。社会的関係に悪影響があることを納得してもらえない場合は、スマートフォンがそばにあるだけで生産性が下がるというデータを示そう。

 ただし、こういう話は、誰の目にも明らかな無礼があった直後には控えるように。チームのメンバーが面目を潰されたと感じたり、言い訳がましくなったりしやすいからだ。ムードを明るくし、状況を笑いにくるむと、こうした議論を前に進めやすくなる。

 密度の濃い話し合いをしようとしているときに、気を散らすようなデバイスが視界に入る場所にあると、どのようなメリットとデメリットがあるかについて、グループで話し合おう。「話し合いに集中しよう」「スマホはカバンの中に」といった基本原則を提案するのもいい。

 ●個人的な問題にする

 上司や配偶者、友人など、特定の個人との間で規範を変えたいときは、逆にデータでやり込めるのはやめよう。代わりに、個人的な問題にするとよい。この場合も、相手がスマホの操作に没頭しているときは、その話題を持ち出さないほうがいい。ないがしろにされているという不満があなたの中で収まり、面目をつぶされたと相手が感じなくなるまで待とう。

 話を持ち出すときは、こんな感じがいい。「自分や相手が何かのデバイスに半分気を取られているように見えるときの会話は、よくないなと最近感じることが多いんですよ。お互い、話を集中して聞くことにしませんか。あなたと話すとき、私はあなたの話に全神経を集中させようと思います。ですから、あなたにも同じことをお願いしたい。集中できるタイミングになるまで待ちます。こんな取り決めで、どうでしょうか」

 ●決めたことは守る

 さて、ここからが難しい。あなたは新しい規範を守るべきだし、誰かが違反したら指摘しなくてはならない。つまり、やめようと言い出したあなた自身がデバイスを盗み見てしまったら、過失を認めなくてはならない。ほかの誰かが同じことをしているのを見たら、頭ごなしにしかることはせず、しかし、違反であることを明確に指摘しなければならない。

 グループの規範を変えようとしている場合は、グループのメンバー全員が足並みをそろえることを求めよう。「スコット、いまはノー・デバイス」のような、簡潔だが明確な伝え方で、デバイスを使う時間ではないことをスコットに思い出してもらうとよい。1対1の場合は、「電子メールをチェックしたいみたいだけど、よかったら後にしてもらえないかな」といった言い方を試してみよう。

 違反を指摘し始めてからしばらくの間は、怒りを買ったり、イライラした表情をされたり、言い訳を聞かされたりすることを覚悟しなくてはならない。とはいえ、新しい規範に沿ったマナーが定着するまでにそれほど時間はかからないので、安心してほしい。

 現代のテクノロジーのおかげで、これまで考えられなかったほど広範な友人や知り合いと、手軽かつ効率的につながることができるようになった。こうした進歩には大きなメリットがあるが、他者の尊重や礼儀といった社会規範を乱すものであってはならない。自分が最も大切に思っている人に対しては特にそうだ。テクノロジーによる妨害について明確に伝え、適切に対処し、その妥当な使い方について相互理解を築くべきときである。


HBR.ORG原文:How to Get Someone to Put Away Their Phone and Actually Listen,   July 19, 2018.

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ジョゼフ・グレニー(Joseph Grenny)
ビジネスパフォーマンスについて優れた論評で知られる著者、社会科学者。また基調講演者としても活躍。著書は米紙『ニューヨーク・タイムズ』で4回ベストセラー入りし、28言語に訳され、36ヵ国で出版されており、フォーチュン500企業の300社で成果を上げている。革新的な企業研修とリーダーシップ開発で知られるバイタルスマーツ(VitalSmarts)の共同創設者でもある。

ケリー・アンドルーズ (Kelly Andrews)
バイタルスマーツのマスター・トレイナーであり、クライアント・コーチでもある。