我々は米国人約2000人を対象として、合計6つの実験を実施し、これらの参加者を無作為に異なる実験条件に割り当てた。その目的は、性差別に立ち向かうための2つのアプローチ、すなわち「構造変革的アプローチ」と「DIYアプローチ」に触れることがもたらす効果を判定することにあった。

 参加者には、フェイスブックの最高執行責任者(COO)、シェリル・サンドバーグの著書LEAN IN(リーン・イン)から抜粋した文章を読んでもらうか、あるいはサンドバーグのTEDトーク「何故女性のリーダーは少ないのか」の音声の一部を聞いてもらった。

 性差別への対処法としてDIYアプローチを提唱する、書籍や資料は世に多く出回っているが、我々はサンドバーグの著作を選択した。その理由は最も著名であることに加え、5年前の刊行以来、「LEAN IN」という言葉がこの問題をめぐる議論に多大な影響を及ぼすようになったからだ。さらに、同書は我々の実験の題材としても優れていた。 なぜなら、題名ではDIYアプローチを強調しているものの、その内容は、女性が直面する構造的問題に関する研究に幅広く言及しているからだ。

 こうして、メッセージの送り手の条件をコントロールしつつ、2つのアプローチの影響を検証する環境が整った。

 参加者の一方のグループにはDIYアプローチを読んだり、聞いたりしてもらった。女性はより野心的に行動していいし、より自信に満ちて話し、会議のテーブルで自分の席を要求し、より多くのリスクを取ることもできると強調する内容だ。他方のグループには、構造的要因や社会的要因(たとえば差別)を強調する箇所を読み、聞いてもらった。このとき、他の条件をコントロールした。

 DIYアプローチを読み、聞いた参加者たちは「女性には問題を解決する力がある」と考える傾向を示した。そのこと自体は、おそらく朗報だろう。ただし、この参加者グループは「問題の責任、すなわち問題を引き起こしている責任も解決する責任も女性にある」と考える傾向も示していた。

 さらに、この2つの傾向は、参加者たちの方針選好とも関連していた。たとえば、今回実施した6つの実験の1つでは、フェイスブックが公表した最近の問題を説明した。具体的には、同社では女性エンジニアが書いたコードのほうが、男性エンジニアが書いたコードよりも頻繁に不採用になっていたという問題だ。これは原因を明快に特定できない、職場問題である。女性自身の基準以下の仕事ぶりと、上司が持っていたバイアスの双方に原因があると考えられるからだ。

 DIYアプローチに触れた実験参加者は、この問題を引き起こした責任も、解決する責任も、女性エンジニアにあると見なす傾向を示した。一方で彼らは、フェイスブックにおける構造的変革(たとえば、コードの書き手をふせたまま上司がレビューする体制に変えたり、バイアスに関するトレーニングを行ったりするなど)には、実施する価値がないと答える傾向を示した。