日本の「現場力」は世界へ売れる価値がある
仕組み化こそが今後の発展の鍵

――労働力不足など日本の社会課題の解決に対し、テクノロジーはどのように貢献できるのでしょうか。

落合 テクノロジーによる自動化・省人化が、労働力不足の解消には不可欠です。一方で、日本は東京圏にかかっている社会インフラコストと、地方の社会インフラを維持するコストがまったく異なる、いびつな経済構造をしています。

 スタートアップ企業のインキュベーション施設に対する国の投資は非常に少ないですし、大前提として、日本は首都圏を中心とした経済型になっていないことをもっと認識する必要があると思います。

久池井 別の視点で考えると、慢性的赤字の地方インフラも、そのSLAを維持する保守のノウハウや品質は世界トップと言えるのではないでしょうか。日本は「鉱物の博物館」と形容されるほど数多くの鉱物を産出しますが、同様に豪雪・高温多湿・台風・塩害など「悪環境の博物館」でもあります。例えば、北海道の保線ノウハウは、シベリアやカナダ等、似たような環境課題を抱える海外の事業者へ売ることによって外部収益をえることができるのではないか?と考えています。

廣瀬 日本で「現場力」と言われているものこそ、世界的に価値があるのは間違いないでしょう。

村上 製造業や建設業などで「匠の技」と呼ばれているものは形式知にできる可能性があります。この「How」は商品化の余地がある、ということですね。

落合 そうです。そこが整理できるといいですね。解決するのは技術だとわかっていても、技術を入れて何をするのかという点の議論が薄いといえます。

 なぜ日本の製造業の品質が非常に高いのか、それは「品質を保てる仕組みづくり」を実現させたからではないでしょうか。

 モジュール化、ユニット化、仕組み化。現在の製造業では、モジュール化が製造プロセスにおいて実現できています。ユニット化ではモジュールをどう組み上げれば良いか、どう提供したら顧客のニーズに適うのかということが分かっています。最後の仕組み化ですが、その組み立てをどう監督し、マネジメントするかです。そのスタイルが日本はまだまだ、均質的で多様性が低い。人材観点では「昭和式」だと感じています。

 しかしそれは改善点があるということ、つまり日本はもう一段階、高めることができると思います。我々はこれだけのインフラを構築できてきたのですから。

村上 一般的にAIが普及すると実務者の食い扶持が減ると危惧されていますが、その点においては実態は逆ですね。

落合 デジタル化で省人化されるのは事務的業務が中心であって、クリエーターや職人、アーティストといった方々はむしろ能力がレバレッジされて理論上は所得が上がるはずです。

 仕事の第1段階は人力、第2段階はAIによる自動化省人化、第3段階はAIによる能力強化です。スキルを持つ人々がアセットで稼げる時代が再び到来すると僕は予測しています。

 イノベーションの観点では「模倣は悪」のように思われていますが、先行する良いアイデアやビジネスモデルをコピーして、より良く、より安く、より使いやすくして市場で勝つことを目指した日本に立ち戻る戦略を僕たちは提案しています。

廣瀬 実務者一人ひとりに「変わってください」と言っても実現は難しい。仕組みを整えることが有効でしょう。仕組み化は大企業が得意とすることです。そのお手伝いで我々アクセンチュアがお役に立てると思います。

久池井 協業はアクセンチュアの得意とするところです。その仕組み化を加速させるエンジンがスタートアップ企業です。その中で、アクセンチュア・オープンイノベーション・イニシアチブがその橋渡し役を担います。

落合 アクセンチュアのような組織がバッファリングレイヤーとなることで、1度実現させた仕組みが繰り返し活用できるようになることを望んでいます。大企業との協業においては、パワーバランスが大企業側に偏りがちです。そうした際のバランスの調整役となってもらえることなど、たくさんのことをアクセンチュアには期待しています。

――本日はありがとうございました。

 

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