では、スティーブ・ジョブズはどうだったのか

 我々の調査対象は、きわめて成功した企業――成長率で上位0.1%、および被買収や新規株式公開で大成功した企業である。しかし、それよりもさらに華々しく成功した企業は、かなり若い創業者が興したのではないか、と思う人もいるかもしれない。

 興味深いことに、ビル・ゲイツやスティーブ・ジョブズ、ジェフ・ベゾス、セルゲイ・ブリン、ラリー・ペイジなどの著名な大成功者を調べてみると、彼らの会社の時価総額における成長率は、創業者が中年を迎えてからピークに達している。

 スティーブ・ジョブズとアップルが、同社で利益率の最も高いイノベーションであるiPhoneを発売したのは、ジョブズが52歳のときだった。ジェフ・ベゾスとアマゾンが書籍のネット販売から他分野にビジネスを大幅に拡大し、時価総額の成長率が最高に達したのは、ベゾスが45歳のときだった。

 こうした高名な創業者たちも、若い頃にピークを迎えたわけではないようだ。類い希なる才能を持った起業家は、人並み外れた洞察力があるかもしれないが(ゆえに、かなり若い頃から成功できる)、それでも年齢を重ねるにつれ、さらに大きな成功を手にするのだ。したがって、若くして成功する起業家の存在と、創業者の起業家としての可能性は中年期以降にピークに達するという一般的傾向は、基本的に矛盾しないのである。

ベンチャー投資家は、なぜ若い創業者を優遇する傾向があるのか

 こうした証拠があるにもかかわらず、一部のベンチャーキャピタルが若い創業者への投資に固執する理由は何だろうか。

 我々の手元のデータでは、この問いに確かな答えを出すことはできないが、2つのメカニズムが影響を及ぼしていると考えられる。第1に、多くのベンチャーキャピタルは、「若さは起業で成功する絶対条件である」という誤った確信のもとに動いている可能性がある。換言すると、彼らは単に間違えているのだ。

 我々の調査結果と投資家の行動との相違を「年齢に対する偏見」に帰すことは容易だが、より妥当と思われるもう1つの説明がある。ベンチャーキャピタルは、「成長可能性が最も高い企業」のみを探しているわけではない。むしろ、自分たちに最大の利益をもたらしてくれる投資先を探しているのだろう。若い創業者は、経験豊かな創業者よりも資金面で制約のある可能性が高く、投資家に低い値段で支配権を渡すことになる。言い換えると、若い起業家は経験の豊かな創業者に比べ、投資家にとってより旨みのある取引案件なのかもしれない。

 研究者の次のステップは、中年の創業者にとって、具体的に何が有利なのかを探求することだ。たとえば、より広い資金源へのアクセス、より深い社会的ネットワーク、あるいは、何らかの特定の経験によるのだろうか。ともかく、起業して大いに成功するために、創業者が年長であることは問題どころか、強力な武器になるようだ。


HBR.ORG原文:Research: The Average Age of a Successful Startup Founder Is 45, July 11, 2018.

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ピエール・アズレー(Pierre Azoulay)
マサチューセッツ工科大学スローン・スクール・オブ・マネジメントのインターナショナル・プログラム教授。経営学を担当。全米経済研究所(NBER)の研究員。

ベンジャミン F. ジョーンズ(Benjamin F. Jones)
ケロッグ経営大学院ゴードン・アンド・ルラ・ガンド・ファミリー記念講座教授。アントレプレナーシップと戦略論を担当。同校のイノベーション・アンド・アントレプレナーシップ・イニシアチブのディレクター。

J. ダニエル・キム(J. Daniel Kim)
マサチューセッツ工科大学スローン・スクール・オブ・マネジメントの博士候補生。

ハビエル・ミランダ(Javier Miranda)
米国国勢調査局の主任エコノミスト。