新しい企画開発手法を、どう組織に根付かせ、運用してきたのですか。

 最も大切なのは、チームのメンバーがプロジェクトに専念できる環境を整えることです。製品・サービスの改良、あるいはプロジェクトの成功に向けて全員が共通の目標を持つ。重要なだけに、ここが一番苦労するところです。日本企業では、一人の社員が複数の業務を抱えていることが多いのですが、そこは現場のマネジャーを粘り強く説得して実現しました。

 もちろん抵抗がなかったわけではありません。でも、実は現場のエンジニアはアジャイル開発についてすでに関心を持っている人が多かったのです。もともと日本の大企業には優秀な人材が多い。米国流のやり方をそのまま実践とはいきませんが、日本の人事制度や文化を踏まえて工夫すれば、必ずデジタル変革を推進できる組織作りは成功するでしょう。まずは小さく始めて、うまくいったらその状態を拡大する。このカイゼン手法は日本企業に向いていると思います。

通信事業者としての
DNAと信頼が強み

 では、アジャイル開発がKDDIの強みといえるでしょうか。

 アジャイル開発という手法が加わったことで、当社の強みが増したと考えています。もともとの当社の強みは、4000万を超えるauユーザーと20万を超える基地局、国内全域と海外をカバーする通信基盤です。そして、24時間365日いかなる状況でも通信ネットワークを守るという固い覚悟と使命感です。例えば、あるサービスを終了する時、当社では終了後のお客さまのサポートまで徹底して考え、可能な限りフォローします。じつはこれ、契約した業務を遂行する外資系企業文化の中で働いてきた私にとって驚きでした。今では、そうした姿勢がお客さまの信頼につながっていることがよく分かります。綿々と受け継がれてきた社会インフラを担う通信事業者としてのDNAも、当社の強みの一つといえます。