耳障りなフィラーを使わないために、沈黙を活用する

 幸い、こうした弱みを強みに変えられる方法がある。フィラーの代わりに、一瞬だけ沈黙するのだ。

 研究が示唆するところでは、大半の会話音声は、短い沈黙(0.20秒)、中程度の沈黙(0.60秒)、そして長い沈黙(1秒以上)で構成されている。講演の達人は2秒から3秒の沈黙、あるいは、それよりも長い沈黙さえ頻繁に利用する。当社の音声データによれば、平均的な話し手は1分間に3.5回しか沈黙しておらず、それでは不十分だ。

 そうなるもの無理はない。沈黙はなかなか受け入れがたいものだ。

 多くの講演者には、極めて短い沈黙でさえ、延々と続くように感じられる場合がある。なぜなら、考えるペースよりも、話すペースのほうが速くなりがちだからだ。我々の研究によれば、平均的なプロの講演者は毎分150語のペースで話をする。だが、ミズーリ大学の研究によれば、人が考えるペースは毎分400語だ(速い人なら、毎分1500語に達する場合がある)。

 この差ゆえに、スピーチをする際に時間の認識がしばしば歪められ、講演者には永遠のように感じられる時間が実際は2~3秒で、聴衆にとってはほんの一瞬なのだ。

 第一印象はどうであれ、うまく沈黙を活用すれば、冷静で落ち着いているように聞こえるうえ、次の3つの効用がある。


 ●考えをまとめる
 考えの脈絡を失った場合は、ほんの少し沈黙することで、ふたたび脈絡をとらえる時間が得られる。沈黙が長すぎない限り(5秒未満)、そのせいで聴衆から責められることはない。

 ●神経を鎮める
 スピーチを始める前に沈黙することは、人前で話すことに不安を抱いている人には、特に重要だ。なぜなら、神経を鎮める効用があるからである。この戦術はスピーチの途中でも役立つ。言葉に詰まった場合は、短く沈黙し、(聞こえない程度に、こっそりと)深呼吸して、リセットしよう。

 ●サスペンスを盛り上げる
 沈黙は、必ずしも「守り」の戦術ばかりとは限らない。戦略的に沈黙を演出すれば、サスペンスを盛り上げたり、ポイントを強調したり、聴衆に重要な見識を吸収する時間を提供したりすることが可能になる。

 フィラーを使うのと同様、一瞬、沈黙することでひと息入れ、次の言葉を見つけ出すチャンスが得られる。沈黙した場合は自信に満ちて状況をよく把握しているように見えるのに対し、フィラーを乱用した場合は聴衆の注意をそらせ、何を言ったらよいのかわかっていないように聞こえる。