事業転換には、それまでとは異なる
組織やKPIが必要

――他にも成功事例はありますか。

松下 小売では、欧州のあるホームセンターの例があります。アマゾンの脅威に対抗するため、商品に付加価値をつけるデジタルサービスを始め、売上を伸ばしています。具体的には、例えばDIYで自分好みの部屋を作りたいという消費者に対し、Web/アプリ上でのシミュレーションツール、実現に必要な資材や作成手順、スケジュール作りなどのレシピを提供しています。

 こうした新たな取り組みに際しては、既存の組織とは明確に切り分け、全く異なるKPI(業績評価指標)、ケイパビリティ(組織的な能力)をつくることが重要なポイントになります。

石川 なぜ重要かというと、1つは既存の組織の中に置くと、免疫機能が働いて潰れてしまう可能性が高いからです。例えばこの事例のように顧客におすすめの商品や資材を教えた場合に、「アマゾンで購入したらどうする?なぜそんな余計なサービスをするのか?」といった批判がきっと出るでしょう。

 もう1つは、新サービスがどのくらいの利益を生み出すのかがわからないため、既存の投資基準で判断すると、すぐに打ち切りになる可能性があるからです。そうではなく、例えば業績の判断は3年後とし、その間、アイデアを出し続けて新たな収益機会の芽を継続的に創出・育成する取り組みが必要です。

日本企業も新たな
事業ドメインに進出すべき

――今回の調査結果を踏まえると、日本企業は今、どのような変革を求められているのでしょうか。

松下 先に述べたように、流動化する消費者との関係構築の一つの方向性として、接点を広げる新たな事業ドメインへの進出を検討するべきでしょう。その方法が「ワイズ・ピボット」です。

 これを実現するには、(1)中核事業を通じた投資力の強化、(2)焦点を絞ったイノベーション戦略、(3)中核事業と新規事業の相乗効果――の3つが重要なポイントになります。中でも難しいのが(2)焦点を絞ったイノベーション戦略というポイントです。今後の事業変化のシナリオを想定しながら自社の事業ドメインを再定義し、目指したいポジションを明確に定義するかが変革の成否を分けるでしょう。

石川 調査結果を見て、「日本の消費者は無関心になってきているけど、企業にはまだまだ従順なんだな」と、安心している人もいるかもしれません。でも、それは違うと思ったほうがいいでしょう。ひとたび何かがブームになって急速に広がれば、あっという間に消費者は移ってしまう可能性があります。

 グーグルトリップスは日本ではあまり普及しておらず中身がよく知られていないので、日本人には合わないだろうと思っている人もいるかもしれません。しかし、例えばハワイに旅行に来ている日本人同士が、この店はおいしいとか、この景色は素晴らしかったとか情報交換できるような新しい機能が次々と開発され、利用者が増えてくれば爆発的に広がるタイミングが来ます。そして、多くの人が使えば使うほど情報が蓄積され、グーグルトリップスのサービスもますます充実していくのです。

 ZOZOTOWN(ゾゾタウン)のスタートトゥデイがそのいい例です。ファッションアイテムをコーディネートしてくれる「WEAR」(ウェア)が話題になり、そこから急速に利用者数を拡げました。

 今回の消費者調査では、消費者の無関心化、企業への信頼の低下がますます進んでいることがわかりました。あなたの会社も顧客基盤を失うリスクが高まっているかもしれません。フィリップス社のような劇的な事業転換を行うのは容易ではありませんが、いま改めて自社の事業ドメインをどこに置くか、プロフィットプールをどこにシフトさせていくのかを捉え直し、それに対する処方箋、戦略を立てるべき時期が来ているのではないでしょうか。

>>関連リンク https://www.accenture.com/jp-ja/insight-hyper-relevance-gcpr

(取材・文/河合起季 撮影/西出裕一)