既存事業のバリューチェーンから
抜け出すことが重要

石川 なかでも、グーグルトリップス(Google Trips)は、バリューチェーン全体を包含して消費者接点を築き、特定のバリューチェーンでの消費者志向には影響されない戦い方をしています(図3)

出典:アクセンチュア

 旅行のあらゆるシーンで、GmailやGoogle Mapsなど自社の基盤上のサービスを提供して旅をサポートしています。このようなプレーヤーの存在に多くの消費者が気づけば、前述した調査結果の通り、即座に乗り換える人が殺到するかもしれません。

 このように従来型の企業は、業界を問わず、新たなディスラプターの脅威に直面しています。彼らと戦うためには、既存事業のバリューチェーンから抜け出し、新たなドメインで戦う必要があります。

新ビジネスに方向転換するための手法
「ワイズ・ピボット」とは

――どのようにして新たなドメインを築いていけばいいのでしょう?

松下 我々が提案しているのは、既存の事業の延長ではない新たな事業を創出する「Wise Pivot(ワイズ・ピボット)」、つまり賢い方向転換の実現です。

 まず、既存のビジネスモデルで新たなコアを生み出す投資原資をつくる。これが第1ステップ。それを基に新たなコアとなり得るビジネスモデルを構築するのが第2ステップです。成長するポテンシャルを持つ事業を探るフェーズになり、ここで新事業の芽をつくります。そして、第3ステップで新規コアへの事業転換を図るというのが、ワイズ・ピボットです。

 そうはいっても、ご想像の通り、新規事業を成功させるのはそう簡単なことではありません。当社の調査結果では、過去3年間に始めた事業による現在の売上高が全体の売上高に対して75%以上を占める企業は、調査対象企業全体(1400社以上)のわずか6%ほどでした。

――「ワイズ・ピボット」の成功事例を教えてください。

松下 照明事業でスタートしたオランダのフィリップス社は、「2025年までに年間30億人の生活向上に寄与する」というミッションに軸足を起きつつ、技術・コンシューマー企業からヘルスケア企業へとピボットを実現しています。現在、売上高の98%以上をヘルスケア関連事業が占めています。

 これを実現するにあたってフィリップス社は、祖業である照明事業の売却を進め、一部株式を持ってはいますが、事業を手放しました。また、テレビ事業や音響事業など非ヘルスケアのコンシューマー事業も売却。投資原資を確保しながら、コンシューマー向け事業をパーソナルヘルスケア事業へと完全に転換しました。

 新たな事業ドメインのコンセプトは「ヘルスケア・コンティニューム(Health Continuum)」。健康な生活から予防、診断、治療、ホームケアまで、BtoC、BtoB領域の事業を集中させてヘルスケア企業としてのポジションを築いています(図4)

出典:アクセンチュア