中国と、中国型戦略をとるその他の国々

 中国型戦略では、国が国営企業や産業政策、国内市場の規模を利用して、産業の生産力を飛躍的に高める。現在、この戦略を採用する最も重要な国は中国だが、発想そのものはけっして新しいものではない。1980年代に日本と韓国によって実践され、ブラジルからインドに至るまで、新興市場で広く使われている。

 この戦略で、家電から鉄道、航空機エンジンに至る産業すべてにおける、GEの競争優位性が損なわれた。グローバルな貿易や投資、教育による製造技術の拡散も同社に打撃を与えた。同社は、いくつかの事業を新興市場でジョイント・ベンチャーとして維持してきたが、産業コングロマリットの中核が痛手を負ったのである。

 シリコンバレーとIT(情報技術)の発達

 GEは広告で「ソフトウエアへの移行」を訴求したことがあったが、同社はソフトウエアとネットワークを基盤にした新しい産業すべてで後れをとっていた。GEがハードウエアで地位を確立し、電子記録ソフトウエアで早期参入を果たした医療機器分野においてさえ、エピック・システムズ社のように医療に特化したソフトウエア企業に水をあけられている。

 IT業界でも、規模と範囲はいまなお重要だが、製造規模よりも社外のネットワーク効果に左右されることが多い。また、シリコンバレーでコングロマリット型のモデルが絶滅したわけでもない。グーグルの持株会社アルファベットが、その好例だ。しかし、シリコンバレーで主要な地位を占めたことのないGEは、まともに勝負できずにいた。

 未公開株式と新しい資本市場

 コングロマリットは、不透明かつ、不利な投資から有利な投資へと簡単に資本が流れない資本市場で繁栄する。このため、新興国経済ではコングロマリットはいまだに主流だが、より効率的な資本市場を有する国々では、その数が減ってきている。

 未公開株式や物言う株主(アクティビスト)、より徹底した情報公開への要求が高まったことで、GEは、単なる事業の寄せ集め以上の価値があることを証明する必要に迫られた。同社は、この難題にほとんど応えられていない。新しい組織構成の下でも、投資家は同社の各事業が相互に付加価値を持つとは信じていない。もともと、不透明な会計実務に頼ってきたGEにとって、時代が要求する透明性は特に難題なのだ。さらに、GEの規模は資金調達において以前は強みとなりえたが、この10年間の資本のだぶつきにより、もはや強みではなくなった。

 ビジネス・スクール

 GE、特にジャック・ウェルチは、ビジネス・スクールで尊敬の的だった。しかし、GEモデルが終わりを告げようとしているいま、ビジネス・スクールの役割は諸刃の剣となっている。

 現在のビジネス・スクールは間違ったことを教えていると考える人々は、GEの人材管理システムこそが、同社を衰退させた要因だったと主張するだろう。かたや、ビジネス・スクールが一般的に正しいことを教えていると考える人は、そのこと自体がGE終焉の要因となったと見なすだろう。

 GEモデルは、事業間で優れたマネジメント手法を共有し、他事業から「ベスト・プラクティス」を取り入れることで価値を創造すると訴えてきた。もし現在のビジネススクールが世界中でこの手法を教えているとしたら、GEモデルの原理は、もはや無用の長物である。

 金融危機

 GEの金融事業であるGEキャピタルがポートフォリオを独占しようとした矢先、金融市場の暴落によって同事業が窮地に陥ったことは間違いない。GEモデルの解体が進むなか、主要事業のうちでGEキャピタルが最初に売却されたのも無理はない。環境に配慮した会社になってほしいと同社を応援していた者にとっては残念な結果だが、ジェフ・イメルトが投資していた石油・ガス事業も、金融危機とシェール・オイル革命によって弱体化した

 ただし、GEモデルはそれ以前から、巨大かつ持続的な力によって機能不全に陥っており、金融危機はとどめの一刺しを加えたにすぎない。GEモデルは、グローバルな競争と技術革命、投資家の力、人材管理の普及によって破綻したのだ。

 GEはきわめて模範的な企業だったため、巷には、小規模なGE型コングロマリットがいまなお溢れている。タイコ・インターナショナルのような大企業は、早々に解体された。しかし他の企業は、新興市場をはじめとして、まだ存続している。こうしたコングロマリットは、全盛期のときのGEモデルから学んだように、GEモデルの終焉からも学ぶことで繁栄するだろう。


HBR.ORG原文: Who Killed the GE Model? July 05, 2018.

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ベンジャミン・ゴメス=カサレス(Benjamin Gomes-Casseres)
提携戦略の専門家であり、ブランダイス大学インターナショナル・ビジネス・スクール教授。30年にわたり、企業合併について研究、講義、助言を行ってきた。Remix Strategy(未訳)など3冊の著書がある。彼が開発したアイデアとツールの詳細はこちらを参照。