RPAとプロセス改善の例

 我々が見てきた企業のなかで、RPAの導入で最大の成功を収めたのは、それをプロセス再編および継続的改善の慣行と組み合わせたところである。2つの例を以下に示す(両社とも、筆者の1人デイビッドのコンサルティング会社であるシンフォニー・ベンチャーズのクライアント)。

 1つ目の事例は、英国最大の商業・リテール銀行であるロイズ・バンキング・グループだ。同行は現在、エンドツーエンドの顧客体験プロセスを変革するために41億ドルをかけたプログラムの一環として、全社的なRPAの導入を推進している。同行で継続的改善とRPAを主導するジェラルド・ピューレンは、変革を成功させるカギとしてRPAを用いて、エンドツーエンドでのプロセス改善を図る任務を負っている。

 ジェラルドは我々に、次のように説明した。「RPA導入をきっかけに、他の事業改善の取り組みが活性化されています。また、当行全体にわたって、他の補完的な技術への投資も適切にできるようになりました」

 多くのそうした改善の1つとして、担保付き貸し付け事業における例が挙げられる。RPAの適用とプロセスの再編を通じ、外交員の要求に応じて営業用のポータルを導入する必要性が明らかになった。それは最終的に、入力事項をデジタル化・体系化するように設計された。

 プロセス再編に向けたこの多面的なアプローチの結果、商品価値を示すうえで幾重にも貢献し、顧客と外交員の双方に体験の劇的な改善をもたらした。いまや同プロセスは、平均で2日要した外交員の要求を30分に短縮している。また、RPAによって実現した業務改善は、他の事業分野における同様のプロセスにも再利用が可能となっている。

 2つ目の事例は、世界最大の給与・人事管理サービス会社のADPである。約5年前にリーンシックスシグマの導入を開始した同社は、効率化に向けた取り組みにおける次の明白なステップをRPAとした。同社のケイパビリティにRPA技術を取り入れることは、国際的なサービス提供における戦略の実現に寄与した。それは、カギとなるプロセスを「標準化し、最適化し、自動化し、一元化する」ことである。

 ADPはこの戦略を念頭に、業務プロセス改善(BPI)部門の内部で、RPAをプロセス効率化ツールとして採用した。RPAのケイパビリティと、従来からのリーンシックスシグマの手法の組み合わせは、ごく自然にかみ合った。これによって、標準化された無駄のない自動化プロセスが、他の自動化技術よりもはるかに有益なスピードとコストで提供されており、改善を拡大させている。ADPで業務プロセス改善およびプロセス自動化のバイスプレジデントを務めるポール・シャーロックは、次のように説明している。

「私のチームは常に、サイクルタイム、全体的なリードタイム、品質、そしてクライアントの体験を改善する新たな方法を探しています。RPA技術はその大きな支えとなっていて、リエンジニアリングのワークショップでは常に検討されています。私は、将来のBPIの取り組みの大多数はRPAをともなうと確信していますが、その重点は、業務プロセスの最適化が第一で、RPAのツールは二の次です。まずはプロセスを標準化し、改善した後に、自動化に着手するのです」

 ロイズとADPは、RPAを使って改善すべきことを特定・実現しながら、他のソリューションにも増してプロセス変革に尽力している。多くの企業はこの両社と根本的に異なり、RPAをあらゆるプロセスの非効率性をなくす万能薬と見なしている。

 業務プロセスの隅々まで深く検証しなくても、RPAによって相当の省力化を達成できるのは確かではある。しかし、RPAが可能とするプロセス変革は、はるかに高いレベルのパフォーマンスと価値をもたらすことができる。RPAの「P」は、「プロセス改善」または「プロセス・イノベーション」を表している――そう考えれば、単なる作業の自動化よりも、はるかに価値あるツールなのだ。


HBR.ORG原文:Before Automating Your Company’s Processes, Find Ways to Improve Them, June 13, 2018.

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トーマス H. ダベンポート(Thomas H. Davenport)
バブソン大学の特別教授。経営学と情報技術を担当。マサチューセッツ工科大学センター・フォー・デジタル・ビジネスのリサーチ・フェロー。デロイト・アナリティクスのシニア・アドバイザー。インターナショナル・インスティテュート・フォー・アナリティクスの共同創設者。ジュリア・カービーとの共著新刊『AI時代の勝者と敗者 機械に奪われる仕事、生き残る仕事』、他多数の経営書を著している。

デイビッド・ブレイン(David Brain)
ロボティック・プロセス・オートメーション(RPA)を専門とする企業、シンフォニー・ベンチャーズの共同創業者兼最高業務責任者(COO)。