RPAにはなぜプロセス分析が必要なのか

 RPAの効果的な導入には、プロセスのマッピング、分析、再編の作業が欠かせない。その理由はいくつかある。

 既存の業務プロセスは、往々にして過度に複雑で、RPAの導入前に除去すべき不要な工程が存在するものだ。RPAは業務ルールの体系化をともなうが、そのルールはたいてい、長年にわたり検証されておらず、現在の環境においては意味をなさないものも多い。

 加えて、既存の業務ルールは時として、判断を要するものとして記述されているが、現実には、より正確で一貫性のあるアルゴリズムに変えることで、より適切で一貫性のある意思決定を図れる場合がある。

 たとえば、ある大手グローバル物流企業では、クレーム処理に関する業務ルールにおいて、返金の容認範囲の決定にはマネジャーの判断を必要としていた。しかし、マネジャーに聞き取り調査をしたところ、自分が従っている経験則を明確に言い表すことができたため、それをRPAプロセスが従うべきルールとして定義することが可能であった。

 多くの企業では、業務プロセスに関する知識と理解のレベルがかなり低い。一連の標準業務手順書(SOP)を揃えているかもしれないが、それらは往々にして言葉足らずで、内容が古くなっている。個々の従業員はたいてい、自分なりに理解しているベストプラクティスに従っている。

 有能な従業員と協力し、プロセスに疑問を呈して改善し、それをRPAに組み込む。そうすることで、自動化されるプロセスの著しい改善のみならず、事業の他の部分においてもプロセスに関する問題が減る。我々は、そうしたケースを目の当たりにしてきた。

 また、RPAは情報環境を簡素化することもできる。この技術は、「回転椅子」のプロセス――複数の情報システムを何度も行ったり来たりすること――をサポートする、と言い表されることがある。しかし、たいていのプロセスは、必要なすべての情報を1度にシステムから取り出せるようになる。つまり、回転はさほど必要なくなる。

 また、業務プロセスにはチェックポイントが組み込まれていることも多く、これまでは人間がチェックしていたが、RPAではもはや必要なくなる。なぜなら、どんな欠陥でも最初に解決された後には、RPAは通常はミスを繰り返さないため、チェックは不要となるからだ。

 求人プロセスを外部委託しているクライアントを持つ某コンサルタントは、既存のプロセスにおいて、同じデータが、いくつもの国々の複数のチームで何度もチェックされていたことに気づいた。その目的は、仕事のオフショア化にともなう品質の悪化という、長らく続く問題に対処することであった。だが、これらの工程は、RPAで精度向上が確実になることで不要となった。

 RPAを基盤とするプロセスの設計により、かつての有益な工程を、わずかなコストで復活させることができる場合がある。組織によっては、顧客への価値を付加する既存のプロセスから、いくつかの工程を、実行に必要なリソースがないという理由で削ぎ落としている。

 たとえば、プロセスにおける顧客とのコミュニケーションという工程で、発注やアプリケーションの状態に関して人間がやり取りを担うには時間がかかりすぎるかもしれないが、ロボットには非常にたやすいことだ。一例として、米国のある医療会社では、プロセスの効率を上げるために、年月をかけて必要最低限の工程にまで削ぎ落とした。しかし、そのプロセスは、サービス利用者とのコミュニケーション不足を招き、結果的にコールセンターのコスト増につながったのだ。

 RPAに基づく業務プロセスは、このような改善を加えることで、「自動化しても他は同じ」場合よりもはるかに効率的・効果的となりうる。RPAの導入とプロセス再編を同時に進めると、取り組みの全体的な時間とコストは増えるかもしれない。だが、その投資の見返りは、プロセスを変えずにRPAを導入した場合を上回る可能性があるのだ。

 RPAの導入に際しては、システムの自動化で人間の仕事がなくなるのではないか、という疑問も付きまとう。人間の職能のいくつかがRPAに取って替わられる可能性は大きいものの、RPA技術を導入したほとんどの会社では、失職は比較的少ない。RPA導入の際にプロセスを再編することにより、人間の従業員に、みずからの能力に見合った仕事を遂行してもらうよう万全を期すことができる。

 かつて、ERPシステムやインターネットなどの新技術は、多くの企業にとって、業務プロセスを改革する促進剤の役目を果たした。RPAは、これらの例ほど劇的な技術進歩ではないかもしれないが、新たなプロセス設計の原動力となる可能性を秘めている。賢明な企業は、RPA技術を利用して、重要な業務活動を遂行する新たな方法を実現させるだろう。