筆者らは、従業員やサプライヤーといったステークホルダーから、リーダーがいっそうの努力を引き出すうえで、経営者の自信過剰が有効であると予測した。自信過剰なCEOは、事業に個人的に関与する度合いが高い可能性がある。自分の個人資産を懸けることによって、会社の将来は明るいと強く信じていることを示すのである(たとえばテスラのCEOイーロン・マスクの報酬体系は、基本給やボーナスが「無給」の完全な成果連動型だ)。

 したがって、より懸命に働く可能性があり(スティーブ・ジョブズは、アプリの画面の色合いといった詳細までマニアックにこだわったことで知られる)、みずから陣頭に立って指揮することも多い(ジョブズが行っていた新製品発表は有名だ)。こうした行動によって、周囲からより強いコミットメントを獲得できる可能性も高まる。

 筆者らはこうした予測を確かめるため、自信過剰なCEOが経営する企業における従業員とサプライヤーの行動を、さらに詳しく調べた。

 従業員のコミットメントを測定するため、筆者らは2つの要因に注目した。1つは、従業員の在職期間である。自社へのコミットメントが強い従業員は、より長期間そこで働く可能性が高いと考えられるからである。2つ目は、従業員が自分の退職金プランに、自社株をどの程度組み込んでいるかに注目した。自分の会社とリーダーのビジョンを信じている従業員は、自社株を多く保有する可能性が高いと思われるからだ。

 その結果、筆者らの仮説を裏付ける知見が得られた。自信過剰なCEOが率いる企業の従業員は離職率が低く、退職年金プランで自社株の占める割合が高いという有意な結果が出たのである。これらの知見から、従業員が自分の人的資本をより長期にわたって会社に委ねているだけでなく、個人的資産を雇用主のリーダーシップに懸けていることもわかる。

 また、筆者らの分析により、自信過剰なCEOは主要なサプライヤーとの関係を築く可能性が高いこと、その関係が平均よりも長期間にわたって持続する傾向があることも判明した。さらに、会社にとって特に価値の高いインプットをするサプライヤーからコミットメントを獲得するうえで、こうしたCEOは優れた能力を発揮する。つまり、自信過剰なCEOは、自社のニーズに沿ったかたちで、研究開発を要する特殊分野の開発を促す能力が高いのである。筆者らの知見は、自信過剰なCEOがイノベーターとしても優れている、という研究結果とも整合している。

 スティーブ・ジョブズは「現実歪曲空間」を持っていることで有名だった。みずからのアイデアと非現実的なスケジュールに極めて深い自信があり、従業員やサプライヤー、投資家たちとも、それを共有できたのである。

 筆者らの研究は、「現実歪曲空間」が現実に存在することを示唆している。少なくとも実業界においては、自信過剰にはプラスの側面がありそうだ。あなたの冒険に、周囲がよりコミットしてくれるのだから。


HBR.ORG原文:Can Being Overconfident Make You a Better Leader? June 18, 2018.

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ケニー・フュア(Kenny Phua)
シンガポールのナンヤン工科大学ナンヤン・ビジネススクールにて、ファイナンスの博士号を最近取得。

T. マンディ・タム (T. Mandy Tham)
シンガポール・マネジメント大学助教授。専門はファイナン(教育)。家族事業コンサルタント、資産管理トレーニングの専門家、半導体エンジニア、ロボティクス・プログラマーとしての顔も持つ。

チシェン・ウェイ(Chishen Wei)
シンガポール・マネジメント大学助教授(ファイナンス)。