ユニークなのは、評価は「能力」に対するものと、「性質」に対するものに分けられるという点である。そして、「能力」に対する評価はそう簡単には揺らがないが、「性質」に対する評価はすぐさま変わるということである。企業で言えば、危機はコア・コンピタンスに関するものというより、透明性や正統性の欠如から生じる(不祥事がその典型である)。

 そうして生じた危機に対して、どのように対処すべきだろうか。おそらく、ほとんどの企業では、クレーム対応はお客様相談室、メディア対応は広報部門、コンティンジェンシー・プランについては危機管理室、株主対策はIR室、ブランドに関するものはブランド室、そして表に出しにくい諸々を総務部が担うなど、細分化されているのが実情ではないだろうか。しかし、ネットを通して危機が拡散され、人々の心がつかまれてしまったら、各部署で都度都度対応していても、その場しのぎの火消しにしかならない恐れがある。

 本書後半の第2部では、具体的な実践方法についてのヒントが示されている。まず、危機は想定以上にすべてがあまりに速く進む、と警鐘を鳴らし、BP社のメキシコ湾原油流出事件、フォルクスワーゲンの排ガス不正問題などを例に、いかに「評価ゲームの敗者」に陥っていくかを分析的に示している。

 不祥事にあたっては、どのようなタイミングでいかに謝罪すべきか。過失がなく単に巻き添えとなった場合でも放置しておいてよいのだろうか。そうした不安に対する施策がすべて落とし込まれているわけではないが、スポンサー契約やコマーシャル契約で見られる「評価を貸し借りする」テクニックまで触れられているのが面白い。

「ポストトゥルース」が時代を表す言葉とされたのが2016年。この傾向はまだまだ続くだろう。真実より他人の評価――そんな時代にどう対応するかが、今後の企業の重要な課題となる。