ユルゲン さらにつけ加えておきたいのが金融サービスです。そもそもシンガポールは金融のハブですが、金融とテクノロジーの融合、フィンテックにも力を入れており、ビジネスチャンスが大きく広がっています。この分野でもシンガポール政府は積極的に投資を行なっています。

今こそ、社会課題を解決する
真のイノベーションが必要

Jurgen Coppens
Accenture Strategy,
ASEAN Managing Director
ユルゲン・コペンズ
アクセンチュア・ストラテジー
アセアン地区 マネジング・ディレクター

――シンガポールでビジネスをスケールアップするには何が必要でしょう?

アリソン 日本には新規事業の実証実験を行なう特区がありますが、その中にいつまでも閉じこもっていては成功しません。今こそ、社会全体の課題を解決する本当の意味でのイノベーションが求められています。そういうビジネスであれば、タイやインドネシア、ミャンマーなど周辺国、さらにはグローバルへとスケールアップしていける確率が高くなるでしょう。

ユルゲン シンガポールがユニークなのは、横瀧さんが話したように、政府が国中にカメラやセンサーを設置し、得られる様々なデータを収集・分析するプラットフォームを構築していること。そこにはデータを活用して、市民サービスや産業の高度化、ヘルスケア、安全性の強化などにつなげていくという狙いがある。東京23区と同じくらいの狭い国だからこそできることですね。

 また、コラボレーションも成功の鍵となるでしょう。シンガポールは、狭いからこそ繋がりやすい利点もあり、大企業からスタートアップまで、コラボレーションしやすい環境が整っています。また、世界のテクノロジー・ビジネスの人材には限りがあるため、シンガポールは教育などの先を見た取り組みで優秀な人材を引き付けています。こうした人材を活用していくことも大切ですね。

多数の日本企業が
シンガポールをR&D拠点に

――シンガポールには今、どんな企業が進出していますか。

横瀧 例えば、住友化学、資生堂、日本郵船、富士通、NTTデータ、島津製作所などがR&D(研究開発)拠点を設置しています。

 住友化学はシンガポール経済開発庁の支援を受け、シンガポールでIoTプロジェクトを開始し、プラント関連業務のデジタル化、グローバルサプライチェーン情報の可視化・高度化、およびクラウドソーシングや最新テクノロジーの積極活用に取り組んでいます。

 資生堂は、東南アジアの研究開発拠点「アジアパシフィックイノベーションセンター」をつくりました。そことシンガポール本社のマーケティング部門とが密接に連携し、現地の人の肌やニーズに合ったスキンケア商品やメーキャップ商品などの開発を進めています。

 日本郵船は、シンガポールで海運・物流業界におけるオープンイノベーションの推進を目的としたトークイベントを、シンガポール国立大学のスタートアップインキュベーション事業であるNUS Enterpriseと共同で開催。NUSはグローバルな事業展開を目指すスタートアップにパートナーと出会える機会を提供し、起業家を育成するエコシステムの構築を支援している組織です。

 また富士通は、地元のウェルネス・ヘルスケア企業と連携し、高齢者の見守りサービスに同社のウエアラブル端末を使ったソリューションを提供しています。NECは、政府系バス会社SMRTコーポレーション向けに、バスの運行サービス向上を支援するソリューションを提供。運転手の運転特性や運行オペレーションの改善を行なうことで、より安全なバス運用を実現しています。

 これまで日本企業はシンガポールを「アジアを統括する拠点」と見てきました。でも、今は多くの企業が自国ではできないことが試せる「テストベッド」としても位置づけているのです。