この答えを見出すには、泣くことの生物学的な特徴、そして、性別による大きな違いをまず知る必要がある。人間が涙を流すのには、さまざまな理由がある。トム・ルッツの著書『人はなぜ泣き、なぜ泣きやむのか?』に説明がある通り、反射的に出る涙は刺激物を洗い流す。基礎分泌の涙は、常に目を覆って角膜の乾燥を防ぐ。情動性の涙は、ポジティブとネガティブ両方の感情から発生する。

 ドイツ眼科学会の調べによると、平均的な女性が情動性の涙を流すのは1年に30~64回、平均的な男性では1年に6~17回だそうだ。1回に泣く時間も、男性では2~4分であるのに対し、女性は約6分である。そして、涙から泣きじゃくる状態になる率は、男性ではわずか6%だが、女性では65%に上る

 この数字を見れば、職場でも、女性のほうが男性より泣く頻度が高いのは当然である。けれども、ほとんどの企業文化は、泣く回数の少ない男たちが構築し、運営してきたものなので、こうした数字を考慮していない。ジェンダーと職場の問題の専門家シルビア・アン・ヒューレットはこう書いている。「泣くことは…コミュニケーション上の大失敗の一つであり、あなたはエグゼクティブとしての威厳を一瞬で失うおそれがある」

 私のように泣いた人間が失った威厳は、取り戻すまでに何年もかかり、転職するしかないことさえある。

 ある家電メーカーの女性営業ディレクター、キャスリンが涙を見せたのは、毎年行なわれるオフサイト会議で、担当部署の売上げが2ケタ減少したと発表したときだった。グローバル営業担当副社長デイビッドは翌日のメールで、感想を述べた。「しっかりしてください、キャスリン。仕事中に泣くのは見苦しいことです」

 一方、男性が職場で涙を流すと、一般には、威厳を失うのではなく得をする。世界的なスーパーマーケット・チェーンの財務担当上級副社長ダニエルは、「何ヵ月もの激務を経たいま、人生のバランスを取り戻したい」ので数ヵ月の休暇を取る、と涙ながらに発表した。部下たちは彼を祝福し、勇気があると言って送別のパーティーを開いた。

 なぜキャスリンは軽蔑され、ダニエルは賞賛されたのだろうか。