自社の強みを生かし
システムの中で個性を磨くことが重要

――エコシステムに参加すると、どのようなメリットがありますか。

山村 前述したグローバル調査では、新しい顧客やマーケット、データにリーチできることなどが挙げられています。エコシステムに参加するとプラットフォーマーにおいしいところを持っていかれるのではないかと思いがちですが、むしろプラットフォームから得られる顧客データを商品開発に利用できるなどのうまみがあります。

 例えば、カゴメはアマゾンの購買履歴や検索キーワードなどのビッグデータから消費者の嗜好を読み取り、トマトジュースの新製品「プレミアムレッド」を開発しました。アマゾンの専売商品として発売したところ、これが大ヒット商品に。こうしたアマゾン限定商品は家電やホビー、食品などにも広がっています。エコシステムの中で新たに手に入れた顧客やデータを利用してプレーヤーとしての価値をどんどん高めていくのも有効な戦略の1つといえるでしょう。

村上 もう1つ、日本のエコシステムの例を紹介しましょう。福岡銀行はデビットカードとスマートフォンアプリを組み合わせて、買い物のキャッシュレス決済に加え、日々の口座管理や貯蓄などにも使える新しい金融/非金融サービスプラットフォーム「iBank」を構築しました。銀行と地元企業、消費者が参加するエコシステムを実現しています。

――エコシステムに参加する際に留意すべき点は?

山村 前述したように、自社の強みを生かすことを考えるのが重要です。そこそこの品質の商品をそこそこの価格で売りますといった中庸なプレーヤーは、特定地域の中で商売が成り立つ間はやっていけますが、エコシステムに参加するとクロスボーダーになるため、逆境に立たされるでしょう。ですから、エコシステムに参加して成功するためには個性を磨いていくことが不可欠なのです。

村上 エコシステムの盟主を狙う企業は、スタートアップの価値を見極める力を磨いていくことも必要です。エコシステムによって、スタートアップが大企業を巻き込み、自分たちの技術やアイデアを活用したビジネスを創出していくことが容易になっているからです。

 この点、金融業界はフィンテックの影響もあり、ここ数年でオープンイノベーションが大きく進展しました。企業の大小に関係なく、素晴らしい技術やアイデアを持つところと組んだほうが得だという認識が定着しつつあります。

 まずは、今求められているエコシステムの定義を十分に理解する。そのうえで自社の強みを生かして事業戦略にどう活用していくべきかを検討してみてはどうでしょうか。

(取材・文/河合起季 撮影/西出裕一)