モバイル技術の社会実装には弾数を撃つしかない

――アリババ、テンセントが世界の時価総額ランキングでトップ10に位置するなど、中国のIT企業の存在感は高まる一方です。グローバル経済や日本経済に今後どのような影響を与えそうですか。

街中にはシェアサイクルが並ぶ。普及し始めて約1年半だが、すでに勝負がつき、黄色のofoと、オレンジのモバイクの二強体制となっている(提供:伊藤亜聖氏)

 中国IT企業の対外投資で目立つのは、東南アジア、インドです。アリババが東南アジア最大のEコマースサイト「ラザダ」を買収するなど、現地有力企業の完全買収あるいは主要株主の一員になることで、域内のデジタルエコノミーに積極的に参画しています。そうした動きは今後、加速していくでしょう。

 ところで、2018年第1四半期、iOSで最もダウンロードされたアプリは何かご存じでしょうか。15秒の動画をシェアするアプリ「Tik Tok(ティックトック)」で、開発したのはアリババやバイドゥ、テンセントでもなく、北京の独立系企業ByteDance(字節跳動)です。グーグルやフェイスブック、アマゾンなど、米国のIT企業が手掛けていないカテゴリーで急成長を遂げる新興企業の動向にも注目しておくべきです。

 ローソンはインバウンド需要を取り込む目的で、全店でアリペイ、ウィーチャットペイメントを導入しました。メガバンク3行は、QRコード決済の統一規格を開発し、実用化を進めています。はたして日本でモバイル決済の普及は進むのか、次世代決済として選ばれるのはどのような規格かは、いまのところはっきりしていませんが、中国のモバイル決済の普及が日本にも大きな影響を与えているのは事実です。

――加速する中国のイノベーションを「サプライチェーン型」「デジタルエコノミー型」「社会実装型」「科学技術型」の4つの類型で説明されていますが、中国や中国企業から日本が学ぶべきポイントは

 モバイル決済については、中国にはアリババとテンセントという影響力を持った企業が存在し、社会インフラとなって、さまざまなサービスが生まれています。そこには成功もあれば、失敗もあるのですが、両方を見ておく必要があるでしょう。モバイル技術をどのように社会実装していくかは正解がありません。弾数を多く撃った社会から面白いものが生まれてくると言っても過言ではありません。であれば、いろいろなバックグラウンドを持った人が集まって、試行錯誤を繰り返していったほうが、正解に近づけるわけです。

 このときに重要になるのはベンチャー企業の数、そして意思決定と投資のスピード感です。たとえば、シェアサイクルは登場してからまだ15カ月程度のサービスですが、最初の5カ月で40社くらいの競合が生まれ、12カ月後には半分くらいまで淘汰が進み、15カ月後に生き残ったのはわずか3社です。彼らを資金的にサポートするベンチャーキャピタルのスピード感もすさまじいものがあります。まさにリスクマネーの供給者というわけです。

 中国では、15カ月後には新しいサービスが生まれ、定着していると言われます。そのサイクルを回せば回すほど、時の流れは加速度的に進んでいきます。加速都市深セン、中国から我々が学ぶべきことは多いと思います。

(構成/堀田栄治)