我々は、NASAの宇宙生命科学局において、3年間の掘り下げた研究を実施。同局の既存の研究開発組織におけるオープン・イノベーションに伴う好機と課題を、時を追って密接に追跡した。

 NASAは14の戦略的問題を解決するために、1年間にわたって2通りのアプローチを併用し、我々はこれらを観察した。1つは、自組織の専門家たちがメインとなり協働する、従来型の研究開発モデル。もう1つは、外部から他分野の専門家を集めての、オンラインのオープン・イノベーション・プラットフォームである。

 後者のアプローチは、14のうち3つの課題に対して比較的迅速に解決策をもたらした。特に、危険な太陽嵐の予測という課題で大いに成功を収め、たった3ヵ月以内で画期的成果を生み出したのである。

 だが、オープンソースによる解決策を現実のものとするのは、もっと難題であることが明らかになった。同局の科学者とエンジニアの中には、プロセスや予算や手続き上の問題を理由に挙げながら、新たなアプローチに反対する人たちがいたのだ。これらの課題はマネジャーによって解決することができたが、緊張関係は残った。

 ここで何が起きていたのかを我々が認識するには、数ヵ月を要した。最も抵抗した科学者とエンジニアは、オープンソースの手法を、みずからの職業的なアイデンティティを土台から揺るがすものと見ていたのだ。

 彼らは、みずからを「問題解決者」と自認していたが、オープン・イノベーションのクラウドソーシング・プラットフォームでは、その役割を果たすことが許されなかった。代わりに、他の人々に解決してもらうべく問題の枠組みを整える、という作業が求められたのだ。

 ある科学者は、我々にこう語った。「より大きな問題について考え、解決に取り組むことが許される。そういう場所に私は惹きつけられてきました。それがNASAでできないのなら、何が私をここに引き留めるというのでしょうか」

 これとは対照的に、オープンな手法を、みずからの役割や能力を向上させるチャンスととらえる科学者とエンジニアもいた。この変化は、一部のエンジニアが言い表したように、「研究所が私の世界」という思考から「世界が私の研究所」という思考へとシフトすることだ。

 彼らは、自分の仕事を「いかにしてやるか」という概念から離れ、より大きな「なぜ」を改めて見直す必要性を説いた。同僚に対しては、みずからの職業的アイデンティティを「問題解決者」から「解決策の探求者」へとシフトするよう求めた。