優先事項が定まっていない

 経営陣が集う経営会議のほとんどは、時間の使い方が驚くほど非効率だ。わずか数日前に、思いつきで議題を設定することが多い(事前にそれさえしない場合もある)。会話は本題を外れ、しばしば些事を取り上げる。決定すべき事項や、解決が必要な問題は放置したままだ。

 コンサルティング会社のRHRインターナショナルが実施したある調査では、有能と判断された経営陣のうち、93%は最も重要な問題を優先し、96%が適切な問題にフォーカスしている。対照的に、有能ではない経営陣については、この数字は前者が62%、後者が53%であった。

 フォーカスがうまくできていない経営陣は、組織に深刻な影響を及ぼす。リソースや努力の無駄、混乱の蔓延が当たり前のことになってしまう。

 私が協力したあるテクノロジーサービス会社では、米国東部部門が中部や西部の部門に比べて収益計画を下回っていることが知られていた。詳しく見たところ、東部部門の経営陣が販促活動を毎週変更していたのに対し、他の部門では月ごとに変更するのが通常であることがわかった。リーダー会議の開催は、全社の平均では6週間ごとだが、東部では隔週だった。それらの会議ではたいてい、45分ほど経つと、リーダーが急ぎの呼び出しや緊急事態で席を外さなくてはならない。

 部門は焦点が非常に散漫としており、ある人物は聞き取り調査でこう答えたほどだ。「何が本当に重要なのか、我々はまったくわからない。だから、ある日誰かが私に向かって、何かを大声で言い立てれば、何であれそれが優先事項になるんです」

 有能な経営陣は、目的とルールを明確に定義している。最も重要な戦略的優先事項に絞って注力し、そこから逸れることがない。きわめて明確な意思決定プロセスを守っている。そして、その秩序立った集中の姿勢を、組織の下層まで伝達しようと意識するのだ。

不健全なライバル意識

 リーダー間の競争は珍しいことではない。結局のところ、リーダーの地位を得た者は、その過程で同僚たちに差をつけて「大きな仕事」を獲得しなければならなかったからだ。

 ただし、極端に個人主義的なリーダーから成るチームが、リソースや地位、影響力、そして(最もよくあるのだが)自分の上司の仕事をめぐって争うと、下層の組織がばらばらになってしまうおそれがある。

 私が短期間協力したあるCEOは、自分のチーム内に競争を促すことが大好きだった。メンバー間で対立が生じるような目標を意図的に設け、それによって最も優れたアイデアが勝つと信じていたが、実際には、醜い裏切りと情報の秘匿を生むだけに終わった。

 不健全な競争は信頼を損ねる。経営陣のメンバーが同僚の動機や暗黙の意思・意図を信頼しなかったら、メンバーは自分が失敗するリスクを避けるために自己防衛、さらには自己利益にさえ走る。そして望みどおりに物事が進まないと、メンバーは説明責任を健全に果たすどころか、互いを指さして非難し合うようになる。

 チームのメンバーが互いを信頼していなければ、重要事項を判断し、実行に移すことなど不可能に近い。そして同様に、それらの意思決定をした経営陣が一枚岩ではないと全社に知れ渡っている場合、従業員に対して実行を求めるのは困難となる。

 我々が実施したある組織診断では、製造部門のあるリーダーは聞き取り調査の中で、サプライチェーン部門のリーダーについて、憎々しげにこう言い放った。「あの人とは5年以上口を利いていませんよ。私が退職するまでに二度と話さなくたって、別にかまいません」

 この確執の歴史は、両部門長のやっかいなライバル意識に端を発しており、両部門の業績にも悪影響を及ぼしていた。確執が勃発して以来、納品の遅延や間違いといった、顧客からのクレームが年々増え続けていったのだ。

 新たに就任したCEOは両部門の反目を知ると、双方のリーダーをオフィスに呼んだ。互いの言い分(どちらにもそれなりの理はあった)を聞いたCEOは次のように告げた。「1ヵ月あげるから、この問題をきれいに解決して、両部門が支障なく連携するようにしなさい。さもなければ、2人ともクビです」

 経営陣は、1つのまとまった力として機能しなければならない。目標を分かち合うためには、責任も共有する必要がある。RHRの調査では、有能な経営陣はそうでない経営陣に比べ、共通目標に関して経営メンバーに説明責任を課す傾向が5倍も高かった。ライバル意識は、外部との競争のために取っておかなければならない。

非生産的な対立

 経営陣の間で対立への対処と情報の処理を誤ると、従業員もそれに倣ってしまう。

 RHRの調査では、有能な経営陣の87%は、チーム内の対立を効果的に処理し、情報の透明性を保っている。そして82%が互いに建設的なフィードバックを交換している。一方、有能ではない経営陣では、対立を効果的に処理しているチームは44%、フィードバックの交換および情報の透明性があるチームは52%にとどまっている。

 この差は大きな違いを生んでおり、有能な経営陣の下では従業員エンゲージメントが平均87%、そうでない経営陣の下では45%であった。

 陰口を言い合ったり、正直な意見を伏せたり、あるいは意思決定が下された後にそれを握りつぶしたりすることは、容認されてはならない。経営陣はそのような行為をしないという規範を明文化すべきであり、組織全体でそれを共有し、責任を負うよう求める必要がある。

 私が見た中で最高の経営陣は、そういった行動規範をみずからつくり、全従業員に公表して、定期的に状況を検証している。私の経験上、自分たちのルールに自身がどれだけ忠実かを従業員に見られていると知っているリーダーは、ルールを破る前に思いとどまれるものだ。

 仮に、あなたが属する経営陣の行動が、終日ビデオで撮影されていたとしよう。それが全社で研修材料として使われるとなったら、あなたはどう思うだろうか。

 経営陣の一員を務めることは、名誉ある特権と見なすべきだ。その特権には責任が伴う。自分の振る舞いを全従業員が見習う――この事実に誇りを持てるよう、行動する責任である。


HBR.ORG原文:3 Ways Senior Leaders Create a Toxic Culture, May 01, 2018.

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ロン・カルッチ(Ron Carucci)
米コンサルティング会社ナバレントの共同創設者、マネージングパートナー。組織やリーダー、業界の変革を目指す企業のCEOと幹部を支援する。ベストセラー作家でもあり、著書に最新刊Rising to Power(未訳)など8冊がある。ツイッター(@RonCarucci)でも発信している。Leading Transformationから彼の電子書籍を無料でダウンロードできる。