ケイパビリティ評価―4.ケイパビリティ棄損リスクの評価と回避策策定

 デジタルM&Aでは対象会社のケイパビリティそのものの評価に加えて、そのケイパビリティが今後も維持・強化されるか、途切れるリスクがないかを見極めるために、ケイパビリティが生み出されるメカニズムまで理解することが重要である。

 一つにはソフトウエアのウエイトが高いデジタルビジネスの特性として、製品・サービス創出の基礎となる開発力が維持されていれば、継続的に進化させていくこともできるが、その半面、既存の製品・サービスがいくら優れていても、買収後にそれらを生み出した経営人材、技術人材が抜けてしまえば進化が止まってしまい経営存続の危機に直結する恐れがある。特にスタートアップ企業では数人のキー人材がすべてと言っても過言でないケースが多く、デジタル企業にとって最大のケイパビリティ棄損リスクはキー人材の流出である。

 また、流出まで行かなくても買収後に対象会社のキー人材とのコラボレーションを進めることができなければ、やはり買収した意味がない。

 したがってビジネス・デューデリジェンスにおいて対象会社のキー人材を特定することが不可欠である。また、対象会社がキー人材を惹きつけ活躍させるメカニズムを解明し、そのメカニズムをさらに強化するための必要投資をビジネスケースに織り込む必要がある。

 そのためには、マネジメント・インタビューや、トラックレコードを評価する際のインタビューにそうした質問項目を組み込んでおく必要がある。

 ここまでデジタルM&Aにおけるビジネス・デューデリジェンスのアプローチを説明してきたが、従来型M&Aと大きな違いがあることをご理解いただけただろうか。

 実際にはビジネス・デューデリジェンスのアプローチだけでなく、マネジメントによる投資意思決定のスタンスや、M&A推進部隊のスキルも従来とは異なるものが求められるため、M&Aを活用したデジタル・トランスフォーメーションを目指す企業にとっては、自社のM&Aケイパビリティについても変革が必要となる。

※「デジタルM&A ビジネス・デューデリジェンスのポイント(前編)」はこちら
 
アクセンチュア
戦略コンサルティング本部
プリンシパル・ディレクター
河合隆信(かわい・たかのぶ)

関西学院大学大学院経済学研究科修了後、1995年に大手電機メーカー入社。2000年にPwCコンサルティング(経営統合により現IBM)に参画後、日本IBMの戦略的買収プログラムの推進責任者として候補企業の探索・事業分析・交渉等を実施。2008年にPEファームに移り、投資実行・投資先企業管理を実施。2013年よりアクセンチュアM&Aプラクティスに参画。

>> デジタルM&A におけるビジネス・デューデリジェンス(前編)へ