ケイパビリティの維持・強化の実現性から競争優位性を評価

②ケイパビリティの維持・強化の実現性

 2つ目の観点は、対象会社が持つ既存のケイパビリティを今後の競争環境変化に応じてさらに進化させられるかの評価である。デジタルビジネスにおいては技術の進化・衰退が短いサイクルで起き得るため、ケイパビリティの維持・強化の実現性の見極めがより重要である。

 もう一度駐車場シェアリングビジネスを例に考えてみる。上述の通り、駐車場シェアリングのプラットフォーマー企業にとっては、現在いかに多くの駐車スペースを確保できるかが勝負のポイントであるが、参入企業の増加とともに駐車スペース確保の競争はさらに激しくなっていくものと予想される。

 初期投資が要らない、または小さいこのビジネスでは駐車スペースオーナーにとってのスイッチングコストが低く、駐車スペースオーナーにとって経済条件の良い(手数料の安い)プラットフォーマーへの乗り換えが比較的容易に起きる可能性も考えられる。そう考えると現時点での駐車スペース登録件数は必ずしも将来を約束しないことになる。

 現在の駐車場シェアリング市場はようやく本格的な成長と競争のステージに入りつつあり、今後どのような展開になるか予想することは容易ではないが、駐車ニーズのあるエリアでシェアリング可能な駐車スペースがある程度市場に出尽くした段階では、競争優位性を左右するケイパビリティが変化するかもしれない。いずれかのプラットフォーマーを通じてエコシステムに参加した駐車スペースオーナーはほかのプラットフォーマーと比較して経済性や安全性などの観点で有利なプラットフォーマーへの乗り換えを活発に行うことも考えられる。仮に市場がそうしたステージに移行した場合には、より多くの、そしてより市場価値の高い駐車スペースオーナーを自陣営に引き寄せるためのプロモーション力や的確なプライシング情報提供力が競争優位性を左右する重要なケイパビリティになるかもしれない。

 デジタルビジネスの世界では、新たなアイデアによって次々に新たなビジネスが創り出されていくが、同時に市場や技術の変化スピードが速く、単発のアイデアはすぐに模倣されるため、堅牢な参入障壁を築くことは難しい(他の追随を許さないほどの天文学的な先行投資ができる場合は別だが)。むしろ参入障壁があるかのごとく淡い期待を持つ発想は危険ですらある。

 デジタルビジネスにおいてより重要なことは、新たなアイデアをベースに、競合に先んじて素早く価値提供の仕組みを構築する実現力と、実験や試行錯誤を通じて独自のアルゴリズムを洗練・進化させエコシステム参加者にとっての価値を高めていく適応力である。それはプラットフォーム型ビジネスモデルの場合だけでなく、ほかの多くの従来型のビジネスモデルの場合にも当てはまる。

 そうした実現力、適応力の有無や再現性を見極めるための具体的なアプローチの一つとして、トラックレコードの評価という方法がある(図3)。主には、テーマ設定の先見性、開発手法、リソース、タイムライン、チャレンジと打開策などの観点からいくつかの設問を設定し、インタビューなどを通じて既存のビジネスの仕組みや技術(特に固有のアルゴリズム)がどのようにして開発されてきたかを明らかにする方法である。 こうして過去の開発経緯をひも解いた上で、特に開発手法とリソースについては、該当分野のエキスパートによる見解を得たうえでケイパビリティの維持・強化の実現性について判断していくことが必要である。

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出所:アクセンチュア