ケイパビリティの特定―③ケイパビリティの独自性の判別

 ビジネスの仕組みを動かすコンポーネントがわかれば、次に対象会社が持つ独自のケイパビリティが何かを識別する。言い換えれば、各コンポーネントが対象会社ならではの固有ノウハウや独自のアルゴリズムによって機能しているのか、あるいは汎用的なデバイスやシステムの組み合わせかを見分けることである。

 前述の配車マッチングビジネスの場合、エコシステム参加者が享受する主要な価値は「料金」に関するものと「マッチング」に関するものに大別できる(図9)。料金に関する価値を生み出すうえで重要な役割を果たすのが時間帯・天候・混雑状況等の条件に基づいて料金を瞬時に算出する「ダイナミックプライシング」のコンポーネントであり、マッチングに関する価値を生み出す重要コンポーネントが「経路検索・所要時間予測」と考えられる。

 特に「経路検索・所要時間予測」は、刻々と変化する交通状況のなかで、1組の乗客と1台の車をマッチングさせ一つの目的地に向かわせる場合でもユーザー体験やドライバーの効率性に大きな影響を与えるが、複数組の乗客をピックアップするウーバープールのような乗り合いサービスの場合には計算がはるかに複雑なものになる。その計算精度と計算スピードは乗り合いサービスを成立させる重要な条件であり、配車プラットフォーマー各社が独自のアルゴリズムを競う典型的な領域と言える。

写真を拡大
出所:アクセンチュア

 また、前述の交通違反検知ソリューションのケースでは、価値とそれを生み出すコンポーネントの関係がより複雑である。たとえば違反を検知し撮影するレーダーやカメラなどのデバイスに対象会社固有のノウハウが組み込まれていることが価値創出につながっているか、あるいは外部メーカーが製造・販売する汎用品かを確認することも必要であり、また証拠映像管理システムについても映像データ処理や違反車両の識別などの機能のうちどこが対象会社独自のアルゴリズムによって動いているのかを確認する必要がある。

 着目すべき点はデバイスやシステムだけとは限らない。たとえば、配車プラットフォーマーは競合する配車プラットフォーマーに対していかに早く多くのドライバーを獲得するかが勝ち残りのための重要な要因であることはよく知られているが、より多くのドライバーを効率的に引き寄せるためのインセンティブを設計し、それをすばやく仕組みとして実装するようなケイパビリティも重要である。同様に交通違反検知ソリューションのケースでも、たとえば導入フェーズにおけるロケーション選定(レーダーやカメラなどのデバイス設置ポイントの選定)はソリューション導入の投資対効果を左右する重要なコンポーネントの一つであり、対象会社固有のノウハウやアルゴリズムが存在するかを確認する必要がある。

 ケイパビリティ評価の4つのステップのうち、「2.ケイパビリティの競争優位性評価」「3.ビジネスケース策定」「4.ケイパビリティ棄損リスク評価と回避策策定」については、「後編」にて詳述する。

アクセンチュア
戦略コンサルティング本部
プリンシパル・ディレクター
河合隆信(かわい・たかのぶ)

関西学院大学大学院経済学研究科修了後、1995年に大手電機メーカー入社。2000年にPwCコンサルティング(経営統合により現IBM)に参画後、日本IBMの戦略的買収プログラムの推進責任者として候補企業の探索・事業分析・交渉等を実施。2008年にPEファームに移り、投資実行・投資先企業管理を実施。2013年よりアクセンチュアM&Aプラクティスに参画。

>> デジタルM&A におけるビジネス・デューデリジェンス(後編)へ