「何ができるか」より「何をすべきか」

 リーンの大きな特徴として、PDCAのサイクルを超高速で回すことがある。具体的には、実用最小限の製品(MVP)を作成し、顧客の反応を見ながらアップデートを繰り返す。これはまさに、いまも昔もスタートアップが行なっている事業の進め方である。

 ただし、特に伝統的企業の場合、リスク回避の傾向が根強くなるため、それを実行するうえでのハードルも少なくない。だが、それは乗り越えなければならない課題でもある。また実際には、そこに課題が存在すると思い込んでいるだけで、杞憂に終わる場合もあるだろう。

 たとえば、こんな事例が記されている。あるテクノロジー企業に置かれたチームでは、世界中で新たなソフトウェアを同時発売することを目指していた。そして、MVPを作成し、あるテストを行うことまでは確定していたのだが、誰かが「法務は何て言うだろう?」と投げかけたとたん、プロジェクトは振り出しに戻りそうになった。だが、リースが法務責任者に尋ねると即座に承認が下り、みな信じられないという顔をしたそうだ。

 スタートアップ・ウェイの発想の中心は、いかなるときも顧客である。上司の顔色を必要以上にうかがって、波風を立てずに「何ができるか」を考えるのではなく、顧客満足を最大化するために「何をすべきか」を問い続ける。そこには、あらゆるスタートアップが実行しており、現在の大企業もかつてはそうやっていたはずの、ビジネスの基本を徹底する重要性が示されているようにも思えた。