仮想通貨の優位性は、それが電子通貨だという点ではない。今日、ドル、ユーロ、円、元は、どれも電子通貨になっているのだから。

 その優位性はむしろ、ブロックチェーン技術により、従来型の決済送金システムに替わる、自己完結型の代替手段が提供される点だ。あたかも、すべてのビットコイン利用者が、同じ銀行で決済しているかのように見えるのである。また、当初、仮想通貨は規制の対象でなかったため、銀行と同等のものとしてスタートさせるために、何らかの規制プロセスを通過する必要もなかった。

 2つのスタートアップが、これをまさに実行した。2013年創業のサークルは、ビットコインを利用してP2Pの決済システムを提供した。2012年創業のリップルは、国境を超えた決済システムを提供し、初期には決済手段として仮想通貨のXRPを利用していた。XRPは、ブロックチェーン技術も基盤としているため(実際、ビットコインよりも技術面で効率がいい)、中央決済システムも提供できるだろう。

 とはいえ、伝統的な銀行も、中央銀行を介したリアルタイムの全銀行間の決済プロセスにより、非常に似通ったサービスを提供している。だが、銀行は2つの困難に直面している。まず、レガシー・システムを変更し、既存の決済ネットワークをまたがって調整するには、費用も時間もかかる。次に、国際取引の場合には、世界共通の中央銀行が存在しないため、異なる通貨での流動性プールを管理するのが難しい。この環境においては、仮想通貨(1つの「グローバル通貨」)に基づく新たなシステムのほうが一見すれば妥当のようにも思える。

 問題は、ビットコイン等の仮想通貨の利用にあたっては、ユーザーが、別の通貨、為替レート、それに付随する価値のあらゆる不確かさと付き合わなければならず、ひいては通貨の価値保存機能への懸念につながることだ。このことは必然的に、サークルやリップルのようなスタートアップの魅力を減らす。だからこそ両社は、仮想通貨から一歩退き、その技術を伝統的な通貨に適用して、銀行や中央銀行に直結させる方法を模索しているのだ。

 この分野では、フィンテック企業が新たな規制によって助けられ、真の破壊的変化をもたらすことになると思われる。現在、英国の「オープンバンキング」イニシアチブと、欧州連合の「第2次決済サービス指令」(PSD2)は、どちらも銀行に対して、APIを介して顧客の口座へのアクセスを提供するよう求めている。

 これは重大な変化である。なぜなら、銀行以外で通貨を保有するサードパーティが送金できるようになるからだ。個人も、好きなスマートフォン・アプリを利用して、異なる残高やおそらくは異なる通貨と向き合う必要なく、決済することができる。アプリによりAPIを介して該当する口座にアクセスし、取引を完了することができるだろう。

 事実上、新たな規制は、通貨機能の分離をもたらすだろう。商業銀行は、従来型の通貨で私たちの預金を保有し、それにより事業者に融資を続けるだろう。だが「取引処理」については、少なくとも最終利用者に見えるところでは、別の決済技術が仲介することもあると思われる。

 では、人々が決済システムの統合を望むのであれば、仲介者がいくつも存在する必要はあるだろうか。そうではなく、支払いの送金を、単に中央銀行的な機能を通じて行ってはどうだろうか。仮に、誰もが中央銀行に口座を持ち、それらが国境をまたがって結びついていれば、経済全体で中央化された台帳が生まれるはずだ。それは、決済のスピード、安全性、効率を確実に向上させうる。

 複数の中央銀行はこのアイデアを検討中であるが、いまのところ、金融システムへのリスクが非常に大きく、メリットは不確かであると結論づけている。しかしそれが実現すれば、金融システムは間違いなく、大きく変わるだろう。


HBR.ORG原文:As Cryptocurrencies Rise, Who Needs Banks? May 07, 2018.

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アントニオ・ファタス(Antonio Fatás)
INSEAD教授。英国ロンドンにある経済政策研究センター(CEPR)の研究員。

ビアトリス・ウィーダー・ディ・マウロ(Beatrice Weder di Mauro)
ドイツにあるマインツ大学の経済政策・国際マクロ経済学教授。INSEAD新興国研究所の研究員、英国ロンドンにある経済政策研究センター(CEPR)の研究員。