限界があるからこそ、協力が生まれる

 著者の2人が示したいのは、人間が存外無知である、という事実だけではない。人間が知っているつもりになるのは、複雑な状況下で、役立つ情報を抽出するように進化している結果でもある。そして、そんな知の限界があるからこそ、人は「自分の頭の外にある知識にアクセスする能力」を持ち、「協力」することで、多くを成し遂げてこられたのだと説く。

 本書ではこう述べられている。「知識のコミュニティに生きているという事実を受け入れると、知能を定義しようとする従来の試みが見当違いなものであったことがはっきりする。知能というのは個人の性質ではない。チームの性質である。」と。

 著者らのこの主張は、知の本質とは何かを考える上で、気づきを与えてくれる。インターネットにアクセスすれば、簡単に情報を得られる現代において、知識量が人の知性を測る基準にはなりえない。むしろ個人の力に限界があることを理解し、周りの知識を活用しながら、いかに集団として高い知能を発揮できるのか――。これから求められるのは、そのような知の追求になるだろう。

 実際、最終的な結論は出ていないが、グループが成功するか否かは主に個人の知能で決まるのではないことを示すデータが集まりつつあり、メンバーがどれほどうまく協力出来るかが大きな要因だと示されつつあるという。

 周囲の人から学び、知識のコミュニティに貢献しようとする姿勢が個人には求められる。そして、優秀なリーダーとは、そのような個が集うコミュニティをもり立てて、コミュニティ全体の知を高め、活用を促せる人へと、これからはより変化していくのかもしれない。

  自らの「知ってるつもり」を自覚することは、ビジネスを始め、世界の見方を大きく変えてくれる。本書では直接的に「ビジネスに役立つ方法論」が語られるわけではない。しかし、知性の本質の捉え方は、これからのビジネスや組織のあり方を考える上でも、多くの示唆を与えてくれる。