組織の健全性

 10. 取締役会のダッシュボードは価値志向型で、非財務的な測定基準を含めているか?

 上級管理部門は、事業部門の責任者と毎月、主要業績評価指標(KPI)をモニタリングしているかもしれないが、取締役会のメンバーは通常、四半期ごとに成果を評価し、重要な差分を協議し、修正措置が図られるようにする。

 新任取締役が調べるべきは、価値が業績管理システムの共通基準であるかどうかだ。これは、経営部門がどの事業および促進要因(ドライバー)が価値を創出するかを理解し、価値創出を算入するバランスの取れた業績と健全性の測定基準(EVA、ROICなど)を使い、そのうえで戦略と価値創出をオペレーション関連のKPIに結びつけていることを意味する。

 よく空白となるのは、非財務的な価値志向型KPIであり、顧客満足度、従業員の生産性、または業績優秀者の漸減などがある。よりバランスの取れた視点の一例に、マッキンゼーの組織健康度指標(Organizational Health Index)があるが、この指標では170項目の質問に関して従業員の意見を集め、社内の一体感、業務遂行のクオリティ、革新のケイパビリティを測定する。

 11. 重要な変化を起こしうる6〜8人の人材は誰か?

 会社の人材プールを知ることは、将来のCEO候補だけでなく、上級幹部の有効度、中核的な役割に関する能力開発プラン、上級幹部陣の下で必要となる最適なケイパビリティを理解することでもある。なかでも、組織内で良くも悪くも、今後の1、2年で重要な変化を起こしうる人物を6人前後把握しておくことは、きわめて重要だ。

 新任取締役は、取締役会に出席する経営幹部を交代制にするよう依頼し、同僚に聞き取り調査を行い、CEOの後継候補に関する報告を指示し、重要な上級経営ポストの上位候補者5人の評価を依頼することで、組織のカギを握る、各層における人材面の問題を理解する足がかりを得るだろう。

 12. 経営部門はリスク関連のトレードオフを最適化しているか?

 取締役会は会社のリスクパラメータを設定し、主なリスク影響度を理解し、適切なリスク軽減手段が取られるようにする責任を負う。取締役が会社の主要なリスクに関する見解をかためる場合、まずは発生する恐れがある潜在的な危機――流動性の危機から商標を巡る紛争、製品の欠陥、そして自然災害まで――のリストを経営部門が用意しているか、そして、これらの状況に備えて会社が取ってきた措置を調べるところから始めてもいいだろう。

 しかし、それで終わりにしてはいけない。ここで探るべき重要な分野とは、経営部門が大きなリスクを無視していないか、小さなリスクの軽減に予算をかけすぎていないか、またはハイリターン/ローリスクのプロジェクトを見落としていないかである。高度なリスク移転市場の出現により、企業は本来のオーナーとしてのリスクのみを負えるようになり、純粋なリスク軽減からリスク・リターンの最適化への転換が後押しされている。

 これまでに挙げた質問は、包括的ではないが、新任取締役が会社の命運を左右する問題を理解し、取締役会の決定に迅速に影響を及ぼし始められるようにする。大半の企業でガバナンスの強化が必要であることを思えば、新任取締役は、同僚の取締役会メンバーが設定した要求水準を満たすだけでなく、それを超えていくことを目標に掲げるべきだろう。

謝辞:筆者陣は、次の方々の本論文に対する多大な貢献に感謝する。ロバート・フェルトン(Robert Felton)、トマス・ハーディ(Thomas Hardy)、サイモン・ウォン(Simon Wong)。

※本稿は2012年3月に発行されたレポートを翻訳したものです。原文は下記よりご参照ください。

原文:https://www.mckinsey.com/business-functions/strategy-and-corporate-finance/our-insights/twelve-questions-every-new-director-should-ask

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