たとえば現状、東証一部上場企業では社外取締役導入企業が99%に達しているが、多くの企業では、取締役会は議論の場ではなく形式的な承認の場に留まってしまっている。そもそも、取締役会が経営に関わる議論を行う場と捉えられていない場合も多い。社長室や経営企画室の選んだ議題のみを承認しており、社外取締役も議題設定にどこまで主体的に関わってよいかのさじ加減を手探りしている状態である。

 それ以前に、社外取締役に経営的な観点から議論をできる人材が入っていないことも多い。社外取締役が、その会社のビジネスモデルがどういったものなのか、競争力の源泉はどこにあるのか、外部の事業環境はどうなりつつあるのかといった文脈の理解を正しくできていない場合すらある。

 こうした企業は、取締役会の潜在力を最大限に活用して、事業価値を高める機会を逸している可能性がある。形式を整えるだけでは十分ではない。取締役会は、うまく活用すれば価値創造の源泉となりうるものである。本質的な戦略の議論に時間をかけることや、本質的なアジェンダ設定をすること、議長が主体的に会議を運営していくことなど、より実質的機能を高める方法は多様に存在する。

 今日の取締役会は、多面的な配慮が必要になってきている。IoT(モノのインターネット)等の技術革新や、ビジネスモデルの変化にも対応しなければならない。投資家との対話を築きつつも、アクティビストへの対応も求められている。

 こうした多様な要請に応えるためには、取締役会の中で多様性を確保しなければいけない。このためには、独立の社外取締役をうまく活用していくことも1つのカギであろう。

 では、そういった人材は、どこから集めればよいのであろうか。また、新任の独立社外取締役は、どのようにすればその企業の価値創出の源泉を効率よく理解し、取締役会において価値を出せるのであろうか。多様なバックグラウンドを持った取締役会の中で、相互の信頼関係に基づき、オープンで忌憚のない議論を活性化させるにはどうすればよいのであろうか。

 そもそも、取締役会に期待される役割が拡大していく中で、価値創造に貢献する取締役会としていくためには、どういったアジェンダを、どのくらいの時間をかけて議論すればよいのだろうか。

 本連載では、上記のような問いについて、先行する米国を中心に、グローバルでの取締役会に関するマッキンゼーの知見や調査結果を紹介していく。

 もちろん、すべてが日本に当てはまるわけではないが、米国においてすら、新任取締役の教育や多様性の確保など、日本と共通する課題も多い。日本の取締役会が形式から実質へと進化していくための参考としていただければと考えている。

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