●人間関係 

 人間関係の培い方は、企業によって異なる。協働をどの程度重視するか、仕事を完遂し重要な決断を下すには、対面して話す時間がどれくらい必要か、などはさまざまだ。組織によっては、他者に影響を及ぼすには、その人と直接会うしかないところもある。あるいは、対面の会議よりも、メール、ショートメッセージ、テレビ会議のほうが好まれるところもある。

 新たな組織に加わった社員は、人間関係へのアプローチ方法を内部の人に尋ねるとよい。たとえば、人に助けやプロジェクトへのインプットを求める際、事前にその人との関係の構築に時間を割く必要があるのか。あるいは単に、必要なときには支援を求めるメールを送れる、「頼れる人」のリストを集めればよいのか、などだ。

 同僚がどこで、どのように仕事をし、決定を下しているかを観察しよう。対面で話すことに多くの時間を割いているだろうか、それとも自分の机にいたり、自宅から仕事をしたりする傾向にあるだろうか。フレンドリーかつオープンにあなたと会ってくれるだろうか。それとも一見気さくそうだが、「交流イベント」を繰り返しキャンセルしてくるだろうか。

 あなたは必要な人脈をつくれるよう、おそらくは他者に助けてもらう必要がある。

 ●コミュニケーション

 新しい職場に加わったら、周囲の人たちがお互いにどのようにコミュニケーションを取っているか観察してみよう。公式の方法、たとえば常に前もって予定され、誰もが十分に準備してのぞむ、会議などが一般的だろうか。それとも、文書をほとんどもしくはまったく用意せず、自然発生的にやり取りするほうが多いだろうか(上司はしばしばあなたの元に来て、「この会議にいま出られる?」と急に尋ねてくるかもしれない)。

 まずは上司に、何を期待されているかを尋ねるべきだ。個人秘書やチームの同僚も、優れた情報源となる。

 上級社員とのコミュニケーションがいつ、どこで許されるかは、階層のあり方に左右されることが多い。たとえば、階層が厳格な環境では、上部とのあらゆるコミュニケーションについて、直属の上司の「事前承認」が必要かもしれない。階層がゆるやかな組織では、社員は上級リーダーにメールを送ってやり取りすることが奨励されているかもしれない。

 このような規範について知る最善の方法は、周囲に尋ねることだ。同僚や直属の部下は、あなたが上司や幹部といかに話を進めるべきかを教えてくれる、最適な存在と思われる。最近うまくいったイニシアチブについて尋ね、同僚がいかにコミュニケーションを通して、上級幹部に影響を与えたかを聞き出してみよう。

 情報の提示のされ方についても、気に留めるべきだ。たとえば会議は、公式のプレゼンテーションを中心に展開されるのか。あるいは、問題の共有と討議が非公式に(自然発生的に)行われ、その場で是非の判断を下されることなくブレインストーミングができるのか。

 組織や部門によっては、膨大な量の詳細情報や分析を含む50ページものプレゼンテーションを好む。一方で、トピックをメールに箇条書きしただけの簡素な議題項目に基づいて進めるのを好む組織もある。

 情報は会議向けにどうパッケージ化されるのが一般的か、問題はどの程度討議されるのか、それとも検討済みのチェックを付けられて終わるのか、社員は上位職者にどの程度恭順の意を示しているのか――こうした事項に注目しよう。

 同席している上級幹部は公式のプレゼンや熱心な提案にどう反応するか、そして、非公式な会話にはどう反応するかを観察しよう。会議で下される決定は、どちらのコミュニケーションから生じることが多いだろうか。

 ●意思決定

 意思決定の下し方も、企業によっていくつかの重要な点で大きく異なる。公式の会議においてその場で決定を下す企業もあれば、会議後に一部の参加者で決定を最終判断することが多い企業もある。たとえ公式な会議が一般的でも、本当の決定は、喫茶スペースや、廊下や、昼食時に下されているかもしれない。

 会議で下された決定が、実行されるかを注視しよう。会議ではある特定の行動に関して合意が形成されたが、その後、他のことが起きているのに気づいたら、あなたが知り得ていない非公式の強力な意思決定メカニズムが働いているものと思われる。

 たとえば、新製品への投資をめぐる決定は、たとえ経営陣全体で検討されていようとも、最終的には主軸となる2人の手に握られているかもしれない。このカギを握る2人のリーダーに、あらゆる公式な会議に先駆けて接触し、自分の見解を示して納得させておくほうがよい場合もあるだろう。

 あるいは、同席している全員が新製品への投資に総体的に同意しているように見えるが、数人は政治的な理由から自分の反対意見を公にしていないかもしれない。そのような事実に気づいたら、彼らがプロジェクトを頓挫させないように、個々に働きかける必要があるだろう。

 意思決定に関して理解すべきもう1つの側面は、自分の会社が「行動志向」か「分析・合意形成志向」か、である。行動志向(行動ありきの姿勢)の組織では、時間と集中の幅は限られる傾向にあり、決定はより迅速に下される。施策担当者は、みずからの立場を明確に示し、主要な利害関係者に対し、決定を下すのに必要な情報を与えなくてはならない。

 これと異なる企業文化では、選択肢、モデル、戦略について、もっと時間をかけた話し合いが好まれる。担当者には、より忍耐力が必要とされる。なぜなら、この合意形成志向は往々にして、最終決定に到達する前に、より多くの裏付け資料や分析を提出したり、同じプレゼンテーションを数回繰り返したりすることを意味するからだ。

 自身の行動志向の程度と、それが新たな職場の文化にいかに適合するかを、自問してみるとよい。

 ●個人志向か集団志向か

 企業によっては、仕事は主として個々人の成果であるととらえられているが、別の企業では、集合的な方向性の成果であるとされている。組織のアプローチが非常に個人主義的である場合には、野心的な人を称える「ヒーローメンタリティ」が一般的によしとされる。報酬は往々にして個人ベースであり、業績管理は個人的な評価に基づく傾向にある。誰もが、同僚とは異なる個人の貢献を正当化されるということだ。

 集団を重視する組織は、それよりもセーフティーネットを提供する。つまり、リスクと報酬は共有されるが、個として傑出し、みずからを差別化するのはより困難であると思われる。このような組織は、よりフラットで、共通の目標や結果をより重視する傾向にある。きわめて野心的で個人的評価が欲しい人ならば、こうした環境では、キャリアの進展に関しては望むものをすぐには得られないだろう。

 個人志向か集団志向かを見極める1つの手がかりとして、他の人が会議で、みずからの仕事についてどのように話しているか、耳を傾けてみるとよい。出席者が概してグループの達成について話しているのに、自分のプレゼンテーションで「私」を強調したら、チームプレーヤーではないとのレッテルをすぐさま貼られるだろう。

 繰り返しになるが、カギを握るのは、個々人がどのように認められ報いられているかを認識することだ。

 ●変革の担い手

 新規採用者の立場と影響力を大きく左右しうるもう1つの文化的要素は、変革に対する文化の志向性だ。ほとんどの組織では、変革を決意して外部から来た者に対しては抵抗を示す。だが一般的に、外から招聘されたきわめて有能なリーダーは、現状を変えるために「物事を根底から揺るがす」よう託されている。

 残念ながら、このような人々の多くは失敗する。(経営首脳からの要請に比べて)実際に変革をどの程度破壊的に進めるべきかについて、文化面の手掛かりを読み違えたか、あるいは、重要な決定をバックアップし支えてくれる人間関係を築かなかったか、その両方によるものだ。新たに職場に加わるにあたって助言を受けたとしても、それが適切ではなかったために、踏み越えてはならない文化的な境界を軽視し過ぎるのである。したがって、外部から来るリーダーにとっての課題は、その組織文化において何に異を唱えることができ、それをいつすべきかを判断することだ。

 変革のペース、そして賛同を取り付けることもきわめて重要な要素だ。次の問いをみずからに投げかける必要がある。自分は変革の旗手として、きわめて積極的かつ迅速に進めてもよいのか。それとも、まずは社員との関係構築、対話、合意形成に注力する必要があるだろうか。

 これらの疑問に答えてくれる人は誰もいない。初期の自分の提案に対する人々の反応を見守って、みずから見極める必要がある。

 まずは2、3人の信頼できる人で自分のアイデアを試してみるとよい。大掛かりなアイデアを上級幹部のいる公式の場で発表する前に、他の人がどのように反応すると思うか、その人たちに聞くのだ。大きな変革を提案する前に、どのリーダーが自分を擁護してくれるかを知っておこう。

 新たな会社に加わる際に最も留意すべきことは、過去の実績があるからといって、現在の組織文化の規範を無視することは許されないという事実だ。ほとんどの組織は、人を過去の実績に基づいて採用するが、今後の成功は、その人が新たな環境でどれだけインパクトを出せるかにかかっている。そして、新たな文化をいかに理解してうまく適応するか次第で、そのインパクトは増えも減りもするのだ。


HBR.ORG原文:When You Start a New Job, Pay Attention to These 5 Aspects of Company Culture, March 29, 2018.

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アラン H. チャーチ(Allan H. Church)
ペプシコのグローバル人材評価・開発部門のシニア・バイスプレジデント。産業組織心理学会(SIOP)のフェロー。共著にThe High Potential’s Advantage(未訳)がある。

ジェイ A. コンガー(Jay A. Conger)
クレアモント・マッケナ大学ヘンリー R. クラビス記念リーダーシップ講座教授。共著にThe High Potential’s Advantage(未訳)がある。