EVのとらえ方:実例からEVの特徴を理解する(3)

特徴3:価値ずらし型のコミュニケーション(働き手が気づいていない新たな価値の訴求)により、その企業に対するEV評価は高まる

 では、企業はどのようにEV評価を高めることが可能なのか。

 人材獲得力やリテンション力を上げるという話になると、給与水準を上げる、多様な働き方を許容する人事制度を整備するといった会社の制度や仕組みを変える話になりがちだ。しかしながら、現実的にはそんなにも簡単かつ短期には会社の制度や仕組みを変えることはできない。では、会社の制度や仕組みを変えない限り、EV評価を高めることはできないのだろうか。

 その答えはNOだ。制度や仕組みを変えずとも、既存の企業の強みのアピールによって働き手のEV評価を短期的に変えることは可能である。EV評価を高めるためのコミュニケーションのポイントを紹介する。

 人材獲得力を上げるには、つまりは、対採用候補者のコミュニケーションにおいては「価値ずらし型のコミュニケーション」を採り入れることが有効と考えられる。「価値ずらし型のコミュニケーション」とは、企業の強み(競合優位性のある提供価値)がその働き手にとっていかに価値あるかを説き新たな価値に気づかせるタイプのコミュニケーションを指す(図9)

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出所:アクセンチュア

 一方でありがちなのが、「Aという仕事がやりたい」という候補者に対して「Aという仕事を与えます」と応じたり、「500万円の給与がほしい」という候補者に対して「500万円の給与を保証する」と応じたりするタイプのコミュニケーション。この会話を「直接訴求型のコミュニケーション」と我々は呼んでいる(図9)

 図10の通り、企業から価値ずらし型コミュニケーションをより密度濃くさまざまな角度から受けた人のほうが、EV評価の平均変化率は高い。加えて図11の通り、EV評価の点数が大幅に高まった人ほど、“直接訴求のみ”の割合は減り、“すべてのタイプ”の割合が増えている。

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出所:アクセンチュア

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 直接訴求型のコミュニケーションに専念するだけでは働き手のEVを充足させるものの働き手の期待値は超えないこと、加えて、他社と同じ土俵で戦うことになるため(不人気企業や業界内劣勢の企業ほど、同じ土俵では負けてしまう)、EV評価を“高める”ことにはなりづらいと考えられる。一方、各企業の強みを活かした価値ずらし型のコミュニケーションにはより好意的に反応する可能性が示唆される。

 このように“コミュニケーション”によってEV評価を高めることは可能だが、もちろんのこと、これがかなうのは既存の自社の強みが活かせる範囲までである。この短期的取り組みを進めるとともに、中長期的取り組みとしてEVに鑑みて会社の制度や仕組みを含めたワークプレイス全体の改良に努めることが欠かせない。