EVのとらえ方:実例からEVの特徴を理解する(2)
特徴2: EVの総量が企業選択を左右する
当研究では「EV評価」と「企業選択の意思決定」との関係性について分析を行った。「EV評価」とは「とある企業が自分のEVをどの程度充たすか?」を働き手個々が前述12要素から評価した結果を指し、その評価結果は0~100点で示される※。たとえば、図5で実例を示した4者のA社への転職におけるEV評価は図6の通り。

出所:アクセンチュア
この分析の結果、実際に、EV評価は企業選択の意思決定に強く影響を与えていることが明らかになった。働き手は、親や知人の勧め、企業の知名度、世間体といった周囲のリコメンデーションではなく、働き手自身にとっての働くことの価値観を軸に働く場を選択している。
<EV評価と企業選択の意思決定との関係性 分析結果概要>
●実際に、調査対象者の70%が、直近の転職活動において、転職候補企業のなかでもEV評価が高いほうの企業を転職先に選んでいた(図7)
●企業間の評価差が大きくなるほど成立率(転職候補企業のなかでもEV評価が高い方の企業を転職先に選んでいた調査対象者の割合)は上昇。10点差がついたあたりから、成立率は80%を超える傾向が確認された(図8)
●これは20代、30代、40代の年代別に見ても、また正社員/契約社員の雇用形態別に見ても同様の結果であった
●さらに、これは転職先の選択だけでなく、自社との比較(転職するか残留するかの意思決定)においても同様の傾向が確認された

出所:アクセンチュア
一見当たり前のことのように思われるかもしれないが、ここには新たな気づきがある。読者が過去に就職活動をした際、12要素のように網羅的に企業の総合評価を行い意思決定していただろうか。おそらくは3つ程度の重要条件を基に意思決定したか、もしくは“フィーリング”で決めたという人が大半だったのではないかと推察する。
先ほど「EV評価は働き手の企業選択の意思決定に強く影響している」と述べたが、これは「12要素によるEV評価」における結果である。一方、「個々にとって重要度が高い3要素に絞ったEV評価」では、企業選択の意思決定との影響度は下がる分析結果となった。つまり、働き手は無意識的ながらもEVを総合的に評価し行動している可能性が高いと考えられる。
よって企業は、働き手個々のEVの一部ではなく、EVの全体をとらえにいくことが必要だ。そして企業はEV評価を高めるほど、ほしい人材の獲得力が上がり、また引き留めたい人材のリテンションがかなう。参考までに、EV評価を5%高めると選考や内定の辞退率は約30%改善し、20%高めると辞退率は約半分に改善されると推計される。