仕事が大好きであれば、何かが違うのか

 ワーカホリックの大多数の人は、自分の強迫的な仕事習慣を認識しており、起こりうる健康リスクについて、友人や家族からしきりに警告を受けている。彼らが一様に口にする言い分は、仕事が大好きだということだ。

 前述の調査とは別に、我々は人身傷害を扱う弁護士のリンダにもインタビューした。彼女は、仕事中毒であることをためらいなく認めるが、仕事が楽しすぎるので習慣を変えるつもりはないと言う。

 リンダの勤め先はカナダにある中堅の法律事務所で、彼女の労働時間(週に40時間)は弁護士としてはきわめて短いけれど、働いていないときには罪悪感を覚え、勤務時間外にもしょっちゅうクライアントのために解決策を考え出そうとする。その結果、仕事後に5歳の我が子との遊びに没頭するのが難しいと感じている。また、仕事についてあれこれと考え、仕事上の課題に取り組むための新しい方法を考え出そうとするので、頭痛や不眠症に頻繁に悩まされている。

 慢性的な頭痛や睡眠障害について、夫や信頼のおける同僚に話すと、2人から医者に診てもらうように促された。だがリンダは当初、それに抵抗した。彼女は我々にこう語った。「実際のところ、少なくとも身体的には、具合の悪いことはそんなに多くはありません。ただ1日の時間がもっと必要なだけです」

 仕事を満喫していれば、ワーカホリックによる健康への悪影響が軽減されるかを確かめたいと、我々は考えた。そこで調査データを検討して、仕事へのエンゲージメントが高い(つまり仕事を満喫し、元気いっぱいに働いていると実感し、仕事にたやすく没頭できる)ことを示したワーカホリックと、仕事へのエンゲージメントが低いワーカホリックを区別した。

 その結果、両タイプとも心因性の健康上の訴え(たとえば頭痛、胃の疾患)と精神的な健康上の訴え(たとえば睡眠障害、抑うつ感情)が、ワーカホリックでない従業員よりも多いことが判明した。ただし、エンゲージメントが低いワーカホリックのRMSは、エンゲージメントが高いワーカホリックの同レベルを上回った。メタボリック・シンドロームになるリスクが4.2%高かったのだ(この差は小さいように思えるかもしれないが、たとえ微増であっても健康に深刻なリスクをもたらしうる)。

 このことから、仕事が大好きであれば、ワーカホリックに関連するリスクの一部が軽減されうることが示唆される。またエンゲージメントが高いワーカホリックは、自宅でも職場でも、エンゲージメントが低いワーカホリックよりも多くのリソースを有していることも判明した。

 具体的には、エンゲージメントの高いワーカホリックは、エンゲージメントの低いワーカホリックと比較すると、上司や同僚、配偶者から、より社会的なサポート(たとえばアドバイス、情報、評価)を受けていると回答した。コミュニケーション・スキル、タイムマネジメント・スキル、および一般的な仕事スキルについても、エンゲージメントの低いワーカホリックよりも高いスコアを獲得し、また仕事への内因性モチベーションもはるかに高いことが、エンゲージメントの高いワーカホリックの回答から明らかになった。

 エンゲージメントの高いワーカホリックは、この豊富なリソースのおかげで、初期の体調不良がより深刻なリスクに発展するのを免れるのかもしれない。リンダの事例では、心配してくれる夫の意見に耳を傾け、最終的には、かかりつけの医者に診てもらった。一般的な健康診断の結果、リンダが思っていた通り、生理学的観点では健康に問題はなかった。だが、かかりつけ医は、リンダが診断中に睡眠障害に言及したことに鑑みて、専門のカウンセラーへ彼女を照会した。

 ここで紹介した事例を検討すれば、ハンナとマイケル、そしてリンダは、3人とも一生懸命に働いているが、仕事へのエンゲージメントは大きく異なることが明らかであり、したがって健康上のリスクも異なる。

 ハンナは長時間働くため、ストレスレベルが時折高くなる。ただし基準値に戻るので、ストレスは慢性的ではなく、ストレスに関連した精神的な健康リスクや身体的なリスクもない。マイケルは仕事への強迫的メンタリティの持ち主であり、しかも仕事を楽しんでいない。そのため、慢性的なストレスやフラストレーションを抱えており、不安や抑うつ感に頻繁に襲われ、心血管疾患になるリスクも高い。リンダも同様に仕事への強迫的メンタリティの持ち主だが、仕事が大好きで、また支えになる家族がいると報告している。睡眠障害と頭痛に悩んでいるが、心血管疾患になるリスクは高くない。