では、不可侵の日をどうやってつくり出すのか。

 カレンダーを16週間先まで見て、各週に1日、他の予定を完全に遮断する「不可侵」な日を設けるのだ。「UNTOUCHABLE」とすべて大文字で書き込み、他の予定には全部大文字の表記を使わない。こうして、不可侵の日が大声で訴えかけてくるようにする。

 なぜ16週間先までなのか。週の数自体よりも、その裏の意図が重要だ。私の場合、16週間先まで講演のスケジュールが確定しているからである。しかし、より重要なのは、この時点ならばその他の予定が決まっていない、ということだ。このときこそ、私のスケジュールの魔法の瞬間である。他のあらゆる予定が入り込んでくる前こそ、不可侵の日のフラグを立てるのに最適なタイミングなのだ。

 実際の不可侵の日には、こんな自分を想像する。私は厚さ5センチの分厚い硬化プラスチックに四方を囲まれた、防弾車両に乗っている。何も入ってこられないし、出られない。会議はフロントガラスで跳ね返す。テキストメッセージやアラート、電話も同様だ。携帯電話は機内モードに終日設定、ノートPCのWi-Fiは完全に切っておく。こうすれば、何であれ私を邪魔することはできない。実際に、まったく邪魔されないのだ。

 しかし、「緊急の場合は?」と皆さんは怪訝に思うだろう。

 端的に言うと、緊急事態はまったく起こらない。詳しく説明しよう。妻が緊急事態にはどうするのかと尋ねた際に、私はまくし立てた。「誰も携帯電話を持っていなかった時代には、連絡がつかないことがあったじゃないか」と。妻はそれでは納得しない。そこで、不可侵の日をスケジュールに組み込み始めた頃、妥協案として「防弾車両のドアをランチタイムに1時間だけ開けておく」と伝えた。

 実際にやってみると、17件のテキストメッセージ、至急らしい10数件のEメール、ボットが延々と送りつけるアラートとフィード、という弾丸の嵐に直面した。そして、妻からの緊急連絡はまったくなし。

 このため、数ヵ月後には方針を変えて、私の居場所を妻に教えるだけにした。もし何か大変なことが起きたら、私の仕事場に電話をかけられるし、最終手段として車で会いに来られるので、妻はそれで安心した。

 不可侵の日を実践して、もう1年になる。これまで緊急事態は一度も起こらず、2人とも連絡を終日取らないことに慣れてきた。