ティール実践のポイント

佐宗邦威(さそう・くにたけ)
株式会社ビオトープCEO
東京大学法学部卒。イリノイ工科大学デザイン学科(Master of Design Methods)修士課程修了。P&G、ヒューマンバリュー、ソニー(株)クリエイティブセンター全社の新規事業創出プログラム(Sony Seed Acceleration Program)の立ち上げなどに携わった後、独立。B to C消費財のブランドデザインや、ハイテクR&Dのコンセプトデザインやサービスデザインプロジェクトを得意としている。『21世紀のビジネスにデザイン思考が必要な理由』(クロスメディア・パブリッシング)著者。京都造形芸術大学創造学習センター客員教授。

入山:佐宗さんは経営者として、ティールのような新しい組織モデルに取り組んでいると思うんですが、実際にやってみていかがですか?

佐宗:いままさに試行錯誤しているところなので、あくまでサンプルとしてお話しますね。まず、私はこの本を思想書だと思っています。極端に言えば、マルクスが『資本論』で説いたことが具現化されるのに発売から数十年を要したように、『ティール組織』も数年でどうこうする話ではないんじゃないかと。

入山:いきなりがらっと変わるわけではないと、

佐宗:そうです。それを踏まえて、ティールを実践するための全体観を自分なりに解釈して、取り組もうしていることをまとめたのがこの図です。これは、ティール組織の実践を行なっている事例のヒアリングを元に、biotopeの組織づくりの参考として作成した資料です。

嘉村:すごいなあ。ここまで実務ベースで落とし込んでいるんですね。

「ティール組織」の全体観(©biotope co., ltd. 2017)

佐宗:正直、まだまだ発展途上ですけどね。この図の「プロジェクト」のところに、「タスクベースでの自律的なプロジェクト生成」とありますが、これは、必要だと思った人が自由にプロジェクトを作れるプロジェクト組成のの仕組みです。一方で、その右下の「会議の運営」は一定のルールを設けていて、常に組織マネジメントの課題共有と改善をその場で行なっていくマネジメントミーティングや戦略ミーティング、組織内のストーリーを共有し、組織文化を醸成するためにのストーリーミーティングなどの組織と個人のフィードバックを生む形で整備していきています。

入山 章栄(いりやま・あきえ)
早稲田大学ビジネススクール 准教授
1996年慶應義塾大学経済学部卒業。三菱総合研究所を経て、米ピッツバーグ大学経営大学院博士課程に進学。2008年に同大学院より博士号(Ph.D.)を取得。同年より米ニューヨーク州立大学バッファロー校ビジネススクールのアシスタントプロフェッサーに就任。2013年から現職。Strategic Management Journal など国際的な主要経営学術誌に論文を発表している。主な著書に『ビジネススクールでは学べない世界最先端の経営学』(日経BP社)、『世界の経営学者はいま何を考えているのか』(英治出版)がある。2014年から4年間、DIAMONDハーバード・ビジネス・レビューにて「世界標準の経営理論」を連載。

入山:はー、なるほど。仕組みで動かすところ、ルールでおさえるところをちゃんと棲み分けているんですね。

佐宗:ルールも、明確にルールと言う形で表現するのではなく、詩のようにストーリーで解釈の余地があるように表現するなど、ゆるさを保つことが大事ではないかと思っています。実際にプロジェクトを回す上では、組織の目的、プロジェクトの目的、個人の目的が、どうすれば有機的につながるかを常に考えています。基本的には、評価の頻度を減らして、仕事の難しさとスキルレベルの2軸で適切な仕事になっているかを定期的に対話することを基礎に、グラフィックレコーディングとかSlackとか、各プロジェクトの文脈をできるだけ可視化するツールを用意しています。

入山:おもしろいなあ。冒頭に出てきたオランダのビュートゾルフも、情報流通のインフラを独自に開発していましたよね。こういう組織モデルの新潮流の話を聞いていると、ブロックチェーンがもたらす影響ってかなり大きいんじゃないでしょうか?

佐宗:私もそう思います。もっと言うと、組織マネジメントにブロックチェーンの技術が実装されたとき、ティールのような組織は広がっていくのだと思います。チーム形態や雇用体系や報酬制度の多様化に対応し、メンバー一人ひとりとの信頼関係をどう育むかが、鍵になると思います。