誰が『ティール組織』を読んでいるのか

入山:『ティール組織』は日本での発売から約1か月で3万部を突破したと聞きました。佐宗さんはこの反響をどう捉えていますか?

佐宗:あくまで個人的な印象ですが、大きく分けて4つのクラスターの方々がアーリーアダプターとして反応したように感じています。社会イノベーター、経営者、組織・人事コミュニティ、ITエンジニアの4つです。興味深いのは、それぞれの層によって興味を持っているキーワードが異なることが、この本で提唱されている思想の適用範囲の広さを表していると思います。

『ティール組織』出版後の初期的な反響(©biotope co., ltd. 2017)

入山:おもしろい!『ティール組織』はこの図に出てくるキーワードをまるごとおさえている気がしますね。

佐宗:多くの人が思っていたことを言語化し、体系化したというのが、この『ティール組織』の意義なんじゃないでしょうか。つまり、ネットワーク時代における新しい「人類の群れ方」と言う普遍的なテーマです。

入山:なるほど。それは書籍というメディアの本質かもしれない。個人的には、Reinventing Organizationsという原題をあえて直訳せず、「ティール組織」をタイトルにして共通言語化を図ったのが、英断というか、ここまで一気に広がったポイントのような気がしています。

オランダ全業種で「顧客満足度No.1」

入山:『ティール組織』には、ティールを実践しているさまざまな企業が登場しますが、嘉村さんはこのなかで訪問された会社はありますか?

嘉村:ビュートゾルフという訪問医療の会社がありますが、その考え方を取り入れた千葉県にある「ビュートゾルフ柏」に伺ったことはあります。本国オランダのビュートゾルフには、主なルールとして「チームメンバーは最大12人」と「定期的に顔を合わせる」ぐらいしかありません。それなのに、オランダの全業種で顧客満足度がNo.1なんですよ。

入山:なんと! それはいったいどういうことですか?

嘉村:「振り返り文化」がビュートゾルフの特徴だとよく言われるんですが、「振り返ること」自体はいっさい強制されていないんですね。成功事例が出てきたら、それを一気に徹底させるのが一般的だと思うんですが、ビュートゾルフの場合は「こうやったら喜ばれたよ」といち早く共有するだけで、それをやるかどうかは一人ひとりが決める。

入山:ティールの特徴の1つ、「自主経営(セルフマネジメント)」ですね。

嘉村:まさにそうです。透明性が担保されていて、一人ひとりが自由に意思決定できて、信頼のネットワークで動いていく。ビュートゾルフはノウハウも全部公開、競合他社の相談役まで引き受けています。