人件費込みの独立採算制を敷いて
現場の成果に直結する分析組織に変貌

 スポンサーシップ制度は、もともとは研究開発部門と事業部門において存在した仕組みだという。研究開発部門は、事業部門に技術を提供する代わりに必要な予算を受け取る。これをデータ分析組織にも導入し、人件費まで含めて業務を請け負う契約にしたのだ。

 つまり、データ分析組織がビジネス課題を見つけるところから、データ分析を経て、実際に現場で生かすところまで一気通貫で受けることにした。事業部門とデータ分析部門とが手をとり、上流から下流までしっかりと互いに責任を負うようになったともいえよう。

 もし、分析結果が現場で役に立たないとなると、予算の決裁をした事業部門の担当者に責任が及ぶことになる。そのため、事業担当者としては、何とかデータ分析の結果を現場に落とし込み、成果につなげたいというインセンティブが働く。

 一方で、データ分析担当者の姿勢も変わる。データ分析が目的であれば、知的好奇心を満たすために高度な分析をしてしまいがちだが、この仕組みにより、分析手法が目的ではなくなったのだ。大事なのは、現場で役に立つ結果を出すことだと。さもなければ、データ分析組織自体が赤字になり、組織の存在意義そのものが問われてしまう。

 こうして河本氏は、社内データ分析組織を部門横断的に、「横串」を通しながらも、事業部門とデータ分析組織とが深くコミットすることで「縦」の関係も築くように腐心してきた。それが外部の評判につながり、大組織にいながらにして、日本で最も有名なデータサイエンティストとして名を馳せたのである。

 本書は、経営者がデータ分析担当者の気持ちをよく理解するのに役立つだけでなく、「便利屋」「下請け」になったデータ分析組織の力を解き放つのにも有用であるのだ。