ストレスのとらえ方を変える

 ストレスをどう処理するかに関して、実際のストレス量と同じくらい重要なのは、ストレスをどうとらえるかである。

 バッファロー大学の研究チームは、大小さまざまなストレス要因には、困難でストレスフルな状況に立ち向かうスキルを育てる効果があることに気づいた。また2013年のハーバード大学の研究では、実験の参加者に、「ストレスがもたらす生理学的兆候は、体がストレスによりよく対処する準備だ」と伝えたところ、参加者はストレス反応を有益なものと見なすようになり、ストレスの強い状況下でも不安を感じることが減り、自信を増すことが明らかになった。その結果、参加者の心臓と血管は、強い幸福を感じるときと同様の反応を見せた。

 日常の仕事のプレッシャーをなくすのではなく、そのとらえ方を変える方向に注意を移してみよう。たとえば、「この新しい仕事のストレスから生まれたエネルギーをどう使えば、仕事に対応しやすくなるだろうか」と自問してみよう。あるいは、「増えた仕事量によるストレスから、効率的な時間の使い方について何が学べるだろうか」と考えるのもよい。

 また、ストレスに圧倒されたり、不安になったりしたときは、ふだんの物の見方がストレスのとらえ方にどう影響しているかを考えてみよう。ストレスの強い状況においてどう考えるべきか、家族や友人、同僚からどんなことをよく言われるだろうか。以前のストレスが強かった状況を振り返ってみて、「当時、その課題に対処するための内外のリソースは十分だったと思っていたか。その状況を経験したいまなら、どのような異なる行動をするだろうか」と自問してみよう。

 とはいえ、ストレス過多になることは実際にある。バーンアウト(燃え尽き症候群)の初期の兆候には、十分に注意しよう。腰痛や頭痛、不眠、短気、あるいは飲酒や暴食など「気晴らしの習慣」の増加などだ。自分自身のSOS信号をよく知って、たまにあった症状が頻度を増してきたら気をつけよう。

コントロールとの健全な関係をつくる

 自分でコントロールできることとそうでないことを区別できる力は、とても重要である。

 困難な状況にのまれてしまうと、どうやっても状況は変えられないと思い込みがちだ。南アフリカのケープタウン大学と英アシュリッジMBAプログラムでの研究によると、成功とは基本的に、自分がもたらすべき責任だと考えるビジネススクールの学生ほど、自分のコントロール外の出来事にまで責任を感じ、勝手にストレスを増大させる傾向がある。

 世の中には常に、あなたがコントロールできない事柄がある。周囲の人の行動や天候、金融危機、あるいは単にタイミングの悪い何かなどだ。「自分はこの状況の根本原因や意思決定者に、どの程度近い位置にいるか。自分にはこの状況を変えるスキルや情報、リソース、人脈があるだろうか」と自問してみよう。頭の中でも紙の上でもいいが、自分の影響力の及ぶこととそうでないことをリストにしてみるとよい。

 そして、コントロールできないものに対しても、それをどう解釈し、どうとらえるかはあなた次第だということを意識にとめておこう。

根本原因を理解する

 広範なビジネス全体やグローバル規模の背景はもちろん、自分個人の背景についても時間をかけて考え、根本原因と今後のストレスの緩和・回避方法を理解しよう。

 たとえばあなたは、意見の不一致や衝突を避けるタイプの家庭や文化の中で育っただろうか。答えがイエスなら、そうした育ちゆえに、対立する状況に直面したときに、あなたは敏感に不快感やストレスを感じるだろう。自分の習慣や本能的な反応を意識し、場合によっては周囲のサポートも求めて、衝突にうまく対処するスキルを磨こう。

 経済、政治、社会、環境……世界で起きていることは何であれ、私たちの考え方を左右する。こう自問してみるといい。「私/チーム/会社は、業界全体や地域全体に影響を与えている大きな流れの圧力を受けているのだろうか。もしそうなら、私/私たちは、計画や予想を変更する必要があるだろうか。この新しい状況で何がうまくいくか、状況をいかにして好機に変えられるか、他の人や会社で模範になる例はないだろうか」

学習を行動に結びつける

 困難な状況に出くわしても、それを落ち込む時間ではなく、学習の好機と見ることはできる。「なぜ私が?」ではなく、「ここから私は何を学べるか」と自問するようになれば、問題を有利に活用できるはずだ。

 まずは、いま経験しているストレスから何かを学べるか、3つ書き出してみよう。自分の感情を特定することや、自分の感情をコントロールするといったことかもしれないし、新しい対人関係スキルや技術的スキルかもしれない。このように熟考してみれば、外部のツールや「別手段」を探さずに済む。どれも、一時的に不快感を和らげるだけで根本原因を解決できない。

 状況を分析するだけでは十分ではない。研究者によれば、行動を伴わない分析は、非生産的な長考や不安をもたらすと指摘している。どういう行動が取れるかをはっきり意識すれば、さまざまな解決策や新しい行動を試すことができ、課題やストレスに対処する生産的な方法を見つけることもできる。

 こうしたスキル構築につながる選択を意識的に行なえれば、ストレスや課題をチャンスに変える態勢が整う。レジリエンスが強くなれば、テクノロジーなど外部のツールも目的を持って予防的に使い、それによって生活と仕事の質を高め、目に前にあるビジネスや社会、世界に対するプレッシャーへの解決策も見出せる。

 ストレスに対処するにはまず、自分自身から始めよう。自分こそ、もっとも効果的かつ強力なリソースなのである。


HBR.ORG原文:To Handle Increased Stress, Build Your Resilience, February 19, 2018.

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アマ・マーストン(Ama Marston)
国際的に著名な戦略・リーダーシップの専門家。共著にType R(未訳)がある。

ステファニー・マーストン(Stephanie Marston)
ベテランの心理セラピストで、ストレスとワーク・ライフの専門家。企業コンサルタントでもある。共著にType R(未訳)がある。